2009年12月16日水曜日

フォーサイト休刊

新潮社の雑誌『フォーサイト』が来年3月号で休刊。購読者あてのメールが届いていました。ゆっくりじっくり読む日本語の情報源として楽しみにしていたので、とても残念。少し前に学研の『学習』『科学』休刊のニュースを読んで、なんともな気持ちになっていたところにこの知らせ。

メールには、休刊を決めた理由のその3として「インターネットの普及で、国際政治経済情報を扱う月刊紙の役割が大きく変化したこと」とありました。スピードでは勝てないからこそ、違った切り口の分析を提供する役目を担っているいう姿勢がうかがえる雑誌だと思っていましたが、やはり紙媒体の限界ということなんでしょうか。

こんな状況の中で、読んでくれそうな人がよく見えないオランダ語の本の翻訳などしていていいのかどうか。迷いは深まります。

2009年12月9日水曜日

オランダ絵本の原画展

オランダの絵本作家・挿絵画家の作品展が開催されます。
次の24人の原画が展示されるとのこと。
  1. Dick Bruna
  2. Charlotte Dematons
  3. Harrie Geelen
  4. Annemarie van Haeringen
  5. Margriet Haymans
  6. Wim Hofman
  7. Philip Hopman
  8. Yvonne Jagtenberg
  9. Ceseli Josephus Jitta
  10. Jan Jutte
  11. Joke van Leeuwen
  12. Ted van Lieshout
  13. Martijn van der Linden
  14. Mance Post
  15. Sieb Posthuma
  16. Wouter van Reek
  17. Daan Remmerts de Vries
  18. Ingrid & Dieter Schubert
  19. Thé Tjong-Khing
  20. Marit Törnqvist
  21. Max Velthuijs
  22. Fiep Westendorp
  23. Sylvia Weve
  24. Fleur van der Weel
来年2月まではアムステルダムの中央図書館で、その後はスペイン、メキシコなど数カ国を回るようです。オランダでやっている間にぜひ行かねば...。

An elephant came by: 24 Dutch Illustrators
展示目録の表紙はこちら(NLPVF)で見られます。

2009年12月8日火曜日

地域図書館の小学生向け予約システム

小学生が図書館の本([een] boek)をインターネットで予約(boek)すると、学校経由で受け取ることができる"Boek een Boek"という制度。新聞で読んだのですが、たまに利用する近所の図書館がやっているプロジェクトでした。図書館バスの廃止にともなって地域の小学校向けに始まったもの。補助金による運営でスタートし、10年近くたった現在では各校が一定の使用料を負担するかたちで基本的な費用をカバーしています。

しくみは簡単。
  1. 児童が(学校または自宅から)www.boek1boek.nuで本を検索して予約
  2. 事務局(図書館)が学校・クラス単位で集計
  3. 図書館が予約された本をクラス単位で箱詰め
  4. 各学校に配達(3週間に1回)
  5. 教室で配本
わざわざ出向かなくても図書館の本に触れられるのは、子どもにとっても親にとっても便利。また教室で本を受け取ることで、「読みたい、知りたい」という気持ちが刺激される効果もあるはず。コンピューターの利用が読書の推進にうまくはたらいている例になっています。


2009年12月1日火曜日

スイス国民投票の余波

スイスであった、モスクのミナレット(塔)の新規建設を禁じる法案をめぐる国民投票。否決が予想されていましたが、57%を超える賛成を得て可決されました。法案賛成派のキャンペーンがイスラムの脅威を主張するかたちであったことは明らか。スイス国旗を埋めつくすようにそびえるミナレットと、へジャブで顔を覆った女性の黒いシルエット。整然と並んだ塔はミサイルのように見えなくもなく、不安感をあおるものでした。

国際機関を多く抱え、中立・寛容の国というイメージがあるスイスでこういった結果が出たことは、ヨーロッパの反イスラム政党を勢いづかせることになりそうです。オランダでも、PVV(自由党)のGeert Wildersが、スイスでできたことがオランダでできないはずはない、と同様の国民投票を求めていくと早速発言しています。ミナレットやモスクの建設でなくても、女性のスカーフ着用を禁止・制限するとか、隠れみのにできる争点はいろいろあると思っているのでしょう。PVVは最近さらに支持を集めていますが、この件で国民投票の発議にまでもっていけるのかどうか。信教の自由や表現の自由といわれるものが、社会のあるグループ(「オランダ人」)だけに認められていること、あるいは、あるグループには認められていないことを当然とする主張がどこまで社会に浸透しているのかが、これからの議論で見えてくるかもしれません。

国民投票の結果について、チューリヒのモスクでインタビューに応じていた若い女性は、「ショックです。でももっとこわいのは、私たちの日々の生活に関して『これはいい、あれはだめ』と決めるような風潮が出てくることです」と言っていました。オランダは、すでにそこまで来ているような気がします。


2009年11月20日金曜日

究極のたらい回し(2)

何回か試しても送信できず、ファックス番号を確認することにしました。一応インターネットでも探しましたが、担当部署は出ていません。手紙にはDHL International B.V. / Hoofddorp / The Netherlandsとあって、電話番号はカスタマーサービスのものしか出ていません。仕方がないのでそこにかけます。出たのは不機嫌そうな男性。
「ベルギーのXXの部署のファックス番号を確認したいのですが...」
「ベルギー? そんなのはわかりません。ここはオランダのカスタマーサービスです」
「それは知っています。オランダのDHLから来た手紙にベルギーにファックスを送るよう書いてあったのですが、番号が間違っているようなので確認したいんです」
「ベルギーのことはここではわかりません」
「Hoofddorpからの手紙で、この電話番号が書いてあるのに、なら問い合わせはどこにすればいいんですか」
「そんなのは知りません(「知ったことじゃない」というかんじ)。Hoofddorpに電話して聞いてください」
「オランダの方から来ている手紙で、参照番号もあるので、どの部署と話すべきか調べてください」
「そんなことはできません。とにかくHoofddorpにかけてください」
と、なんともな展開。Hoofddorpの電話番号はもらったので続いてそこにかけてみると、Amersfoort(また別の事業所)につながる。総合受付みたいなものかと判断して事情を話すと、
「それはここではわかりません。別の部署につなぎます」

次に出たのはベルギーのアクセントのある女性(#1)。
「ここではわからないので、別の部署に回します」
で、別の女性(#2)に同じことを説明。
「その部署につなぐことはできますが...」
というわけで、それらしいところに(#3)。ところが、こういう理由でファックスを送りたいのですが、と言うと、その担当はここではないと思う、という返事。確かに、ファックス番号は全然違うし、住所もあってない。手紙にサインした人の名前も先方は知らない。ブリュッセルで通関となっていればベルギーが情報受付窓口になるが、詳しくはわからない。なので、
「カスタマーサービスにつなぎます」
とベルギーのカスタマーサービスに(#4)。
「ファックス番号はこちらではわかりませんので、その部署と直接お話しください」
こうやってたどり着いた女性(#5)に、また事情を話す。すると、
「調べますので、お客様番号をいただけますか?」
やっと話が具体的になったと思って番号を言いかけると、途中でさえぎられる。
「それはオランダのお客様番号です。ここでは対応できません」
「この電話はもともとオランダのHoofddorpにかけたんです。何人もの人と話して、あなたのところに回ったんですが。オランダのDHLから来た手紙に、ベルギーのこの部署にファックスを送るよう書いてあって、どうやらこの荷物はブリュッセルで通関されたらしいのですが」
「変な話ですけど、調べましょうか」
あらためて番号を伝えると、
「...あ〜、最近手紙が行ったんですね。え〜っと...」
ってことは、最初のオランダのカスタマーサービスでもやっぱり確認できたはず。あの対応にまたもやもやした気持ちがわいてくる。
「でも、ここにファックスを送るというのは、どうもおかしいように思います。ちょっと電話で聞いてみます」
待たされること数分。
「手紙を出したオランダの部署と話しました。こちらに送ってもらうので正しいそうです。私にとっても初めてのことなんですけど。ただ、手紙のファックス番号は間違ってます」
と、やっと目的を達成。7人(プラス最後の女性が電話した相手:少なくとも1人)と話さなければわからないようなことか? という疑問ともやもや感は残るものの。 

ファックスはこの後すぐ送りました。たぶんこの流れについて苦情を書き添えるのがオランダ流なのだとは思いますが、そのエネルギーはありませんでした。そして、期待どおりというか何というか、まだ返事はありません。いったいどうなるやら...。




2009年11月19日木曜日

究極のたらい回し(1)

お隣のドイツやベルギーに比べてオランダのサービスの質が劣るのは、周囲のオランダ人も認める事実。よくも悪くも個人の資質によるところが大きく、きちんと対応してもらえるかどうかは担当者次第というのもふつうです。いろいろ痛い目にあってずいぶん鍛えられたと思っていたのですが、それでもびっくりするしかない、究極のたらい回し —オランダ語では"(iemand) van het kastje naar de muur sturen(人を)戸棚から壁に行かせる"と言います— 体験をしました。

相手はDHL。日本のAmazonで本を買うと、商品が到着して数ヶ月後にオランダの付加価値税プラス手数料の請求書が送られてきます。これまで何回かの分も間違っていて、電話したりメールを書かされたり、いつもやれやれというかんじの手続き。今回は、6月半ばに受け取った荷物について、10月初めに請求書が届きました。このときの不備は3つ。
1) 通関手続きの明細書がない
2) 金額が間違っている(円の額にユーロの単位がついている)
3) 内容物が本なのに、税率が19%になっている(本の場合は6%)
で、請求書にある番号に電話。このとき対応してくれた人は、確かに金額は間違っているし、本となっているので新たに請求書が送られるはずです、今の請求書は無視してください、という答えで、拍子抜けするくらいあっさり終了。なので明細書の送付はお願いしませんでした。その後、11月半ばになっても請求書は来ないまま、週末にかけて留守にしていた間に届いていた手紙を読んでびっくり。
「税率が間違っているという件について、商品の内容を確認するための情報が必要です。...つきましては、その情報をXXX@dhl.comにメールしていただくか、以下にファックスまたは郵便でお送りください。...なお、この件について10日以内にお返事がいただけない場合、当方での確認は不要と判断されたものとします...」
この手紙は11月2日付なのですが、私は11日までは毎日郵便物をチェックできる状況にいたので、届いたのは12日以降。つまり、文面通りに解釈すれば、読んだ時点ですでに遅し、ということ。それに、通関書類に本と明記されている(と聞いた)のに、いまさら何を出せというのか、理解できません。

それでも、返事をしなかったために間違っている請求額を支払うはめになるのはくやしいので、Amazonの請求書を送ることにしました。メールアドレスは前に嫌な思いをしているものと同じだったこともあり、ファックスで。これがなぜかベルギーの部署だったのですが、手紙に書いてあるのでそのとおりに。ところが、ファックスがつながりません。どうも番号が間違っているようなのです。



2009年11月11日水曜日

AKO Literatuurprijs 2009

今年のAKO Literatuurprijsは、ベルギーの作家 Erwin Mortier の Godenslaap (De Bezige Bij) が受賞しました。Mortier(1965- )は、Dimitri Verhulstとともに、オランダでも知られているフラマン語作家。

選考委員のコメント:圧倒的な筆致、意表をつく表現で第1次世界大戦を女性の視点から描いた初の長編小説。オランダ語文学ではさほど注目されてこなかった時代を独特に表現している。

なお、受賞作以外に最終選考に残っていたのは次の5作品。
Joris van Casteren - Lelystad - Prometheus
Joke van Leeuwen - Alles nieuw - Querido
Carolina Trujillo - De terugkeer van Lupe Garcia - Meulenhoff
Christiaan Weijts - Via Cappello 23 - De Arbeiderspers
Tommy Wieringa - Caesarion - De Bezige Bij

ちなみに今日は第1次世界大戦が終結した日でもあります。

2009年11月4日水曜日

拡張現実を取り入れたキャンペーン

Selexysで本を買って袋に入れてもらったら、小さなパンフレットがついていました。表紙にコフィ・アナン前国連事務総長の写真。その横に"バーチャル・ポップアップ絵本"と小さく書いてある。中身は黒枠の中に写真から起こしたような絵がページの片側に続くだけ。表紙裏の説明にあるサイトへ行ってみると、またアナン氏登場。エチオピアに暮らす女の子の物語を知ってほしいという。さらに進む。ウェブカムの設定をして、音声にあわせてパンフレットをカメラの前にかざすようにという指示。すると、Halimaという少女の世界がカラーで飛び出してきました。パンフレットを持つ角度を変えると、遠くの景色も見えます。

これ、地球温暖化が途上国に及ぼす影響を訴えるキャンペーンだそうです。Augmented Reality(拡張現実)を使ったここまで大規模の取り組みは世界でも例がないらしく、そのことの方が注目されているようですが。ちなみに、パンフレットの発行部数は130万部とのこと。

パンフレットがなくても、キャンペーンのサイト上で画像を印刷すれば(Hier is het boekje > Download het pop-up boekje)絵本は見られます。ただし、パンフレットと同じではないと断り書きがあります。

2009年10月28日水曜日

新型インフルエンザ、「軽度の」流行

オランダ国立公衆衛生・環境研究所(RIVM)が、国内で新型インフルエンザが「軽度に」流行している発表したのは先週金曜日(10月23日)。Ab Klink保健相が今朝テレビ番組でコメントしたところによると、現在1日10人が新型インフルエンザで入院しており、そのうち1人は集中治療室に入っている状況。

オランダが発注したワクチン3,400万回分のうち、現在入手しているのは700万。11月中にはさらに300万が届くと見込まれているが、残りは年明けになる予定。目下、ハイリスクグループ(妊婦、60歳以上の者、糖尿病患者、肺・心臓疾患のある者)に子どもを含めるかどうかを急ぎ検討中。ただし、対象となる年齢層が広い場合にはワクチンが不足するため、優先順位を見直す必要もあるとのこと。

オランダでは通常、検査や入院の設備がある病院に行くには、まずホームドクターにかかる必要があります。こう考えると、1日に10人も入院というのはかなりたいへんなこと。身近なところで感染のニュースはまだですが、それも時間の問題かもしれません。

2009年10月14日水曜日

エコなエコへの道:The Green Guide for Business

ひとことでいうと、エコ(ecology)とエコ(economy)を両立させるための指南書。事業の規模によらず、環境にやさしい企業行動が2009年のイギリスでどのように実現可能かを説明した本です。

表紙の裏には、最初のステップとして10の"quick wins"が。短期間で結果が出る改善案といいつつも、紙の使用見直しや冷暖房の調整といった、まあ「ありがち」なものから、エコドライビングや出張の必要性を再検討するといったことまで含んだリストです。こういった改善の大前提となるのが、事業としてのカーボンフットプリントの算出。二酸化炭素の排出量をできるだけ減らすために、事業として何がどの程度できるのかを、具体的な数字や例を豊富にはさみながらみています。

読者のターゲットはたぶん、企業の管理職。環境プロジェクトに直接かかわってはいないものの、それなりの知識と認識を求められるような立場の人が、現状を把握するために読む、というかんじでしょうか。

アプローチが違う本ですが、以前読んだCradle to Cradleは、考え方としてはともかく、実際にどう使うかが見えてきませんでした。こちらはずっと現実的なレベルの話が展開されていて、ある程度は先を見通せる安心感があります。不況をうけて、企業の環境問題に対する取り組みが縮小・後回しになることをふまえて出版された本でもあり、特別大きな投資をしなくても効果が出る方法を紹介し、実践につなげていく意識を固めたいという著者の考えが透けて見えます。

Chris Goodall, The Green Guide for Business: The Ultimate Environment Handbook for Businesses of All Sizes, Green Profile, 2009, ISBN 978 1846 6887 44.

2009年10月7日水曜日

Gouden Griffel 2009

Kinderboekenweek(子どもの本週間)のはじまりにあわせて、Gouden Griffel(金の石筆賞)が発表されました。オランダ語の児童書を対象とする文学賞です。

今年の受賞作は、Het geheim van de keel van de nachtegaal。フラマン語作家Peter Verhelstが、アンデルセンの童話『小夜啼鳥』を翻案した作品です。Verhelst(1962 - )は、詩集やおとな向けの小説などを発表しており、これが初めて手がけた児童書。なお、この本は、すでに今年のWoutertje Pieterse PrijsとGouden Uil Jeugdliteratuurprijs(どちらも児童文学賞)を受賞しています。

Carll Cneut(1969 - )のイラストは、とても静かで、それでいて力強い。ふんわりかわいい雰囲気はまったくありません。このちょっとこわいようなかんじ、『モチモチの木』(作:斉藤隆介、絵:滝平二郎、岩崎書店)のあの切り絵の世界を思い出しました。

児童書というよりも、これまでオランダ語ではあまりなかった「おとなが読む子どもの本」になっています。

Peter Verhelst, Carll Cneut, e.a.: Het geheim van de keel van de nachtegaal, De Eenhoorn, 2008, ISBN 9789 0583 8507 9.



2009年10月2日金曜日

年金改革協議:ポルダーモデルの行き詰まり

老齢年金(AOW:Algemene Ouderdomswet)の支給開始年齢(=法定退職年齢)を現在の65歳から67歳に引き上げたい政府に対して、労使側が代替案を出すために春から続いていた協議が決裂しました。

使用者側は、高齢化が進む中、労働力の安定的な確保のためにも段階的な引き上げを行うべきと主張。一方で労働組合(春と秋の政労使三者協議に参加している3組合:FNV、CNV、MHP)では、意見が統一できなかったようです。FNVとMHPは65歳以降の就労を制度として義務づけることには反対。CNVは67歳までの引き上げも検討するという姿勢を見せましたが、まず高年齢労働者と女性が65歳まで働き続けられるようにすることを条件としました。(実際のところ、オランダでは、抜け道のようなものも含めて制度的に早期退職が可能。65歳を待たずに引退するのがむしろふつう)FNVとMHPも、現行の退職年齢までの労働力率を上げる施策と、65歳以降も働きたい人は働ける制度を設けることを求めていました。

半年にわたる交渉が結局物別れに終わったことで、ポルダーモデル/オランダモデルのメカニズムが機能しないことを示す例がまたひとつ増えました。メディアへの対応を見ていると、政労使の合意どころか話し合いのテーブルにつくことができていたのかさえ疑問です。政府は当初の改革案をすすめる構えですが、労働組合側はすでに具体的な抗議行動を検討しているとのこと。来年3月の地方自治体選挙をみすえた政党のかけひきもあり、まだまだ後を引きそうです。

2009年9月29日火曜日

Jip en Janneke、イランで出版

オランダ語のこどもの本でいちばん有名なJip en Janneke(Annie M.G. Schmidt)のペルシア語版が出たというニュースが少し前にありましたが、実はこの本、原著出版社Queridoとの契約を経ずに出版されていたということです。

オランダ在住の翻訳者は2006年にQueridoに問い合わせのメールを送っていたものの、担当者が産休中でメールは行方不明になった模様。その後翻訳者はイランの出版社にQueridoと直接やりとりして版権を取得するよう依頼し、契約がまとまったと考えていた、とのこと。

今日のde Volkskrantの記事によると、Queridoの担当者はこれから契約にむけて交渉をしたいと述べています。まあこれは当然。ただし、同じコメントの中で、このようなやり方は「プロ意識に欠ける」と翻訳者を非難している点はちょっとずれているような。原著が好きで訳したい/訳したとしても、最終的な版権交渉を翻訳者が個人ですることはめったにないと思います。それに(この短い記事では状況はわかりませんが)、翻訳を出す出版社の方で話を進めているというなら、それを信じるしかないわけで。

そもそも、イランで出版というニュースが出たのは2週間近く前です。その時点でなにもせず、別の新聞が違法出版だったと指摘したことに反応するというのも、いまひとつ理解できません。


2009年9月25日金曜日

新しい課題

ひさしぶりにブースに入りました。リレー通訳と聞かされていたので始まるまでは不安でしたが、問題なく終わって一安心。みなさんの発言がわかりやすかったというだけでなく、ちゃんと話をしよう、という空気がずっとあったことにも助けられました。

その一方でリテンションが少し弱くなっているのを実感。なんとかする時間は増やせなくもないけれど、この手の案件は最近ぐっと減っているし、目標なしにトレーニングをしても楽しくない。とりあえずまた関連本を読むところから始めようかと。

2009年9月17日木曜日

ちょっと気になるオランダ語:Taal is zeg maar echt mijn ding

4月に出版されてすぐにベストセラーリストに登場、8月には100,000部が出たという話題の本。著者Cornelisseはコメディアン(と言っていいのかな?)でコラムニスト。この本も新聞や雑誌に連載されているコラムを再構成したもの。

テーマはいまのオランダ語、の使われ方。日常的な言葉づかいの中で、ちょっとおもしろいところ、ヘンなところを観察ときどき分析している。オランダのオランダ語の話なので、ベルギーの人はそんなに笑えないかも。ことばの乱れを指摘して、それを正そうとするという流れはどの言語にもあるのだろうけれど、めくじら立てて「正しいオランダ語を!」と言ったりするのとはまったく違う位置から見ているかんじが楽しい。

Paulien Cornelisse, Taal is zeg maar echt mijn ding, Uitgeverij Contact, 2009, ISBN 978 90 254 3049 8.

2009年9月11日金曜日

ゴッホの書簡集 完全版が発売

画家ファン・ゴッホの書簡集にはいろいろな版がありますが、900通におよぶすべての手紙を収録した完全版がVincent van Gogh - De Brieven(フィンセント・ファン・ゴッホ—その手紙)として来月出版されます。

もともとの手紙(オランダ語:600通、フランス語:300通)とその英語訳、注釈に加えて、手紙の中で出てくる作品の写真もあわせて掲載。全6巻、2,180ページというこの全集、英語版とフランス語版も同時に発売されるとのこと。オランダ語オリジナルの定価は395ユーロ。ただし来年1月初めまでは325ユーロの割引価格が適用されるようです。

Leo Jansen, Hans Luijten, Nienke Bakker, Vincent van Gogh - De Brieven, Amsterdam University Press (2009), ISBN 978 90 8964 102 1.

2009年9月7日月曜日

ドキュメンタリー Tokaido

安藤広重が東海道五十三次に描いた地点の今を、ベルギー人のドキュメンタリー作家Luc Cuyversが訪ねたロードムービー。ベルギーの放送局VRT/Canvasで放映されています。東京から京都までを20日弱で旅した様子を1回30分 x 10週で見せているのでどこも駆け足で、おまけその気ぜわしさをあおるようなナレーション。落ち着いて観る番組ではないのですが、なかなかおもしろい。がらんとした街角や見捨てられたような記念碑。ゴミの山。妙にのんびりした雰囲気の朝の乗換駅。観光ガイドブックとは無縁の、特に何もない日本の日々を切り取っていると思います。

番組のサイトはこちら

2009年8月31日月曜日

夏の終わりに

2週間、文芸翻訳のワークショップに参加してきました。選考の際の試訳提出に始まり、決まってからの課題の準備もかなり大変で、直前まで迷っていたのですが、行ってよかった。思っていたよりずっと濃い時間でした。いろんな人と知り合えたのがまずいちばん。それに、これまでひとりでちょっとずつ固めてきたやり方がそんなに悪くないらしいこともわかって、少し自信もつきました。こんなかたちで日本語とオランダ語を行き来する機会は今までなかったし、あれこれ考え(させられ)つつも楽しい毎日でした。

気がついたことをゆっくり消化して、きもちのよいやり方に取り込んでいきたいです。



2009年8月11日火曜日

フランスからのユダヤ人強制移送:Haar naam was Sarah

1942年7月16・17日、ヴィシー政府はフランス警察を動員してパリ市とその周辺でユダヤ人の一斉検挙を実施。連行した13,152人(12,884人とも)のうち、独身者と子どものない夫婦を先に移送し、親子(男性1,129人、女性2,916人、子ども4,115人)は15区にあった自転車競技場Vélodrome d'hiver(Vel' d'Hiv')に閉じ込めました。水も食料も与えられず、ガラス屋根を通す熱に焼かれる5日間を生き延びた親子は、この後フランスの中継収容所で離ればなれにされ、まず大人だけがアウシュビッツに送られました。約1カ月後には子どもたちもアウシュビッツに到着、全員がガス殺されています。

Haar naam was Sarah(原題:Sarah's Key)は、この史実をテーマにしたフィクション。物語の軸となる人物は、1942年当時10歳のユダヤ人少女サラと、60年後の2002年、パリに暮らして25年になるアメリカ人ジャーナリスト、ジュリア。本の半ばまでは、1942年7月その日の明け方からのサラの体験と、Vel' d'Hiv'についての記事をまとめることになるジュリアの行動が交互に語られます。

サラには幼い弟がいました。警察が踏み込んできた時、この弟は子ども部屋の隠し戸棚に入って動きませんでした。サラは、すぐに迎えにくるからと約束してこの戸棚に鍵をかけ、両親とともに連行されます。一方でジュリアは、取材を進める中でフランス人の夫の家族の大きな秘密に触れてしまうことになります。最近まで夫の祖母が住んでいて、近くジュリアたちが引っ越しを予定している家は、Vel' d'Hiv'で検挙されたユダヤ人の家族のものだったのです。

サラの目を通した描写が終わるところまではかなり引っ張っていかれました。後半、ジュリアの語りだけになってからは前半の静かな力強さが感じられず、母として生きる女性の葛藤、という方向に流れているのがちょっと残念というか、話の展開としてはわかるものの、あまりのれませんでした。でも、久しぶりに一気に読んだ本です。

著者de Rosnayはパリ在住。フランス語での著作はすでにありますが、これが英語でのデビュー作とのこと。

Tatiana de Rosnay, Haar naam was Sarah, Artemis & co, 2007.

[参考:マルセル・リュビー、『ナチ強制・絶滅収容所:18施設内の生と死』、菅野賢治訳、筑摩書房、1998年]

2009年7月28日火曜日

気分よく断る

昨日納期の関係でお断りした案件、今朝別の翻訳会社さんから問い合わせがありました。こちらの予定は同じなので、同じように説明したのですが、どうも納得はしていただけなかったような感触。

先週は先週で、1カ月前に料金その他を提示した後何の連絡もなかったところから電話。追加分の料金を確認したい、というので話し始めたところ、夕方発注すれば翌日にでも納品と考えているらしいことがわかって、それは無理です、と。それならこれから他をあたらないといけない、とかいろいろ言われましたが、欲しい日が早くから決まっているのに1カ月もほったらかしにしている方が問題なんじゃ...。とにかく、提案した方法ではすぐに対応できないことがはっきりしていたので、そう伝えました。

このあたり、何度経験しても、さらっときちんと説明でき(た気にな)るときと、なんとなく後味の悪い気分になるときがあるのが不思議。メールや電話の向こう側の人の力をうまく借りて、お互いきもちよくやりとりを終えられるようになりたいものです。

2009年7月23日木曜日

オランダのパートタイム労働の割合

CBS(中央統計局)の発表によると、2008年のオランダの就業人口ではパートタイムの割合が約半分に達しているとのこと。EUで2位のスウェーデンは26%、EU全体の平均は20%以下で、オランダの数字(47%)がいかに大きいかがわかります。

オランダの特徴は、パートタイムで働く女性がひじょうに多いこと。15〜65歳で仕事を持っている女性の実に75%がパートタイムだそうです。男性でも4人に1人がパートタイムで、やはりEUで最大の割合になっています。ただし男性の場合は若い世代(学生)と50歳以上で高く、25〜50歳では8人に1人となります。

CBSの記事はこちら。EU各国の数値を比較したグラフがあります。
なお、ここでのパートタイムとは、被用者と自営業者などすべて含めて、フルタイムより少ない時間(一般に35時間以下)働くという意味です。

2009年7月17日金曜日

海辺の図書館

そこそこいいお天気が続いていて、オランダの海(北海沿岸)もかなり混んでいるようです。ホテルやバンガローパーク、キャンプ場など、適当な場所に1〜2週間滞在するのが休暇のひとつのパターン。このあたりは特に見どころがあるわけでもないし、海で遊んだり砂浜で本を読んだりしてすごす人がほとんど。

そんな観光客向けに、夏の間だけ海辺の図書館がオープンしています。ふつう公共図書館というと年会費を支払わないと借り出しはできないのですが、この移動図書館では名前と住所を届ければ大丈夫。ただし期限は1日。本の貸し出しだけでなく、絵本の読み聞かせの時間や作家が本選びのアドバイスをするイベントがあるそうです。

地域の図書館が始めて5年目となるこの行事、今年は10カ所で開催。
Strandbibliotheek, zomer 2009(海辺の図書館2009年夏)のサイトに地図があります。

2009年7月9日木曜日

Mai Spijkersが選ぶこの夏の5冊

オランダでは数少ない独立系の出版社Prometheus/Bert Bakkerのオーナー社長Mai Spijkers氏。日刊紙 de Volkskrantのインタビューで、夏の休暇中に読むべき本を紹介していました。

1  Steenrijk Mariëtta Nollen
  不動産業界で成功した男の人生
2  Verdeel en heers Henk Wesseling
  ヨーロッパ列強によるアフリカ分割の歴史
3  De Prooi Jeroen Smit
  オランダの名門銀行ABNアムロの買収劇
4  Strikt Minke Douwesz
  精神科医の女性が語る女性との恋愛
5  De eeuw van Sonja Prins Lidy Nicolasen
  今年初めに96歳で死去した女性詩人の伝記

4(Van Oorschot)以外はすべて同社が出版。
夏休みの課題図書にはなりませんが、2はそのうち読んでみたいです。

2009年6月30日火曜日

土日の仕事、どこまでやるか

先週金曜日の午後、携帯電話が鳴りました。某社のコーディネーターさんから翻訳のお問い合わせ。
量を聞いてみると多くない。納期も余裕がある案件だとおっしゃるので、いつならできるかと考えながら、ご希望はいつですか、と質問。
「火曜日の朝でお願いします」
ということは月曜日1日で作業。余裕どころか厳しい。少し延ばしていただくのは無理でしょうか、と言ってみたところ...。
「週末は仕事されないんですか?」
数秒絶句してしまいました。いや、しないわけではないんですけれど、別の予定もあるので、と妙にしどろもどろになって説明しながら、びっくり、そして少しがっかりしました。先方の声に嫌みなかんじはまったくなく、本当に単純な問いに聞こえましたが、深読みして(その会社のためには)土日も休まず働くのが普通だという考え方から出た言葉かと思うと、ちょっと複雑。

最終クライアントの条件を最優先するのは当然。でも、それしか見えてなくて「コーディネート」はないと思うのです。仕事を受ける側にも都合があるということ、忘れているのか、無視しているのか。考えたことさえないのかも。

週末も仕事、します。ただし、「ときどき」とか「することもある」の程度。どうしてもという状態でなければ、ほかのことを優先。平日に休むというのも思ったほどうまくいかないとわかってからは、なるべく土日は空ける方向で予定を立てるようになりました。きもちよく働くために気をつけていることのひとつです。

2009年6月25日木曜日

ネット接続に税金?

試験は無事終わりました。
読みたい本と読まないといけない本の山が気になりますが、今日は図書館へ。

お天気がいい、というだけではなく、いろんなところで夏休みモードに入ってきています。昨日来たニュースレターは休暇前の最終号となっていたし、来週からは「夏休みなので」新聞も薄くなるはず。地球の裏側のニュースがほとんど入ってこなかった時代ならともかく、7月8月の2カ月間も世の中は動いているわけで。(編集部が?)休暇だからといってページ数を減らすという考え方は今でも理解できません。

オランダでも新聞業界は苦境に陥っています。これはニュース離れではなく、もしかすると紙媒体離れでもないのかもしれない。MetroやSpitzなど、コンパクトにまとまった無料の日刊紙が登場して数年。毎日、例えば通勤途中に新聞を買って読む人がそれだけ減ったということでしょう。

そんな新聞業界の救済策を検討する政府の委員会が報告書をまとめました。その提案の中に、各世帯のインターネット接続に一種の税金をかけ、それを新聞業界救済の財源とするというものがあるそうです。なんだか妙な話、というわけでこの案だけが大きく取り上げられてしまったのですが、新聞業界はなんとこの提案を「歓迎」しているらしく。ニュースはただではないことを消費者に理解してもらえるという立場。いまさら何を、という気がします。記事を書く上でもインターネットは欠かせないツールになっているはずなのに、新聞が売れないことをそのせいにして消費者に負担を強いるのはおかしい。無料のニュース検索サイトとの関係を変えるとか、もっと別の方法があるはず。


2009年6月18日木曜日

試験準備の週

来週の試験を控えて勉強中。環境マネジメントに関する概論的な科目で、執筆陣には今の環境相の名前も。

オランダ語だけでなく、専門的な知識について役立つルートはこれまで
科目の勉強→仕事
だったけれど、今回初めて
仕事→勉強
を実感している。TPMや生産管理の案件で触れたことが次々出てくる。頭の中でぱちぱち、ジグソーパズルのピースがはまっていくかんじ。これはこれでおもしろいです。

2009年6月12日金曜日

アンネの日記、隠れ家へ帰る

今日は『アンネの日記』を書いたアンネ・フランクの誕生日。1929年生まれなので、生きていれば80歳。

当時の隠れ家は今、Anne Frank Museumという記念館になっています。アンネの日記帳やノートなどはこれまでNIOD(オランダ戦争記録研究所)が保管していましたが、今後は記念館の方でこれらの資料をすべてまとめて展示することにするそうです。特別室のオープンは今年11月の予定。


2009年6月9日火曜日

ドキュメンタリー HOME

写真集Earth From Aboveなどで有名なフランスの写真家、Yann Arthus-Bertrandが手がけたドキュメンタリー、HOME。YouTubeでも公開されているそうですが、オランダでは夜遅くテレビで放映されました。

空撮した映像にGlenn Close(英語版)の落ち着いたナレーションが重なって、メッセージとしては新しいものではないのに、見入ってしまう1時間半でした。

HOMEのサイトはこちら

2009年5月25日月曜日

Cradle to Cradle

Cradle to Cradle: Remaking the Way We Make Things (North Point Press, 2002)読了。
William McDonoughとMichael Braungartが、サステイナブルな社会の実現を目指す新しい工業デザインの枠組みを提唱した本。

今の「エコ」のコンセプトはEco-Efficiency:
3R+R(Reduce, Reuse, Recycle + Regulate)−削減、再利用、リサイクルと規制で、環境への悪影響をできるだけおさえることを目指す。つまり効率化。→ 環境破壊が進み、目に見えるかたちで現れるのを先延ばしにするだけ。根本的な解決策にはなり得ない。
これから目指すべきコンセプトはEco-Effectiveness:
waste = food ゴミという概念はない。あるサイクルで寿命を終えたものは、別のサイクルの栄養となる。製品をデザインする段階で、その製品を使い終えた時にどのような栄養になるか−効果−を考える。

方向性としてはわかりやすく、もやもやが晴れたようなような気になった部分もあったのですが、実際にビジネスにどう取り入れるのかについては具体例に乏しい。新規の事業を立ち上げるというならまだしも、今現在動いていることをどう変えていくかというところに踏み込んでほしかったです。

2009年5月15日金曜日

86歳女性のブログ、本として出版

ニュースサイトNu.nlの記事から。

Fried van Goghさん(86歳)が自身の戦争体験を綴ったブログが出版された。Friedさんがブログを始めたのは3年前。オランダ領東インドでの日々を記録に残しておきたいというoma(おばあちゃん)に、お孫さんがブログを提案。キーボードとマウスの使い方から練習して書き始めた。


Bron: ANP Video | © RTVWest

ビデオの中でちらっと見えるブログを手がかりに検索してみましたが、一般には公開されていないようです。本がそのうち図書館に入ることを期待しましょう。


2009年5月13日水曜日

Libris Literatuurprijs 2009 受賞作発表

Libris Literatuurpris 2009、Dimitri Verhulst(1971 - )が受賞しました。ベルギー人作家としては、Hugo Claus(1929 - 2008)に続く2人目。

ベルギーのニュース番組で放送された受賞後の短いインタビューで、「...今までお金のためにやってきたことに、これからはもっとはっきりNOと言えるようになると思う。それがうれしい」と話していたのが印象的でした。

2009年5月1日金曜日

女王の日

4月30日、女王の日パレードの見物客に車が突っ込んだ事件。多くのオランダ人の誇りである「開かれた王室」が大きく変わることになるかもしれません。

意図的な行動だったと口にして、現場で逮捕された犯人は病院で死亡。移民ではなく、ふつうに仕事を持って生活していたオランダ人だったとのことで、ニュース報道からは、宗教や文化の違いといった、ある意味わかりやすい背景事情が見えてこないことに対するもどかしさを感じます。




2009年4月24日金曜日

訃報:Martin Bril

作家・コラムニストのMartin Brilが亡くなりました。享年49歳。

むずかしい言葉を使わずにその場の空気や人の印象を伝えるスタイルが好きで、日刊紙 de Volkskrant のコラムはいつも最初に読んでいました。自身の病気(がん)のことも時々書いてはいましたが、この4月から毎日1面に掲載されるコラムの担当になり、新しいスタートを切ったところ。それが2週間もしないうちにこんなかたちで終わってしまうとは、誰も思っていなかったでしょう。

昨日テレビで観た短い映像。アムステルダムの街を歩きながら、「どうしてみんな下向いて歩いてるんだろう。自分は上を向きたいけど」と一緒にいた誰かが言うと、「悲しいことがあるからね」と答えていました。照れなのか、小さく顔をしかめて。

土曜日の過ごし方、偶然入ったレストランでの顛末、ある田舎街のショーウィンドウでみかけた靴のこと。彼のコラムは、誰にでもあるようなひととき、でもほとんどの人が意識していないようなことを、やさしくすくいとっていました。




2009年4月17日金曜日

スロウな1週間

ぎゅーっというかんじで忙しかった2カ月間が一段落して、「これをしなきゃ、あれも終わらせなきゃ」という感覚から解放されました。片付けないといけないことはやはりありますが、朝起きて、しようと思ったことを順番にやっていくのんびりペース。

そんな中、昨日かかってきた電話。「通訳の案件があるんですけど...」土曜日から月曜日まで、メインは日本語とオランダ語、とさらさら話しつつも、場所は口にしない。「場所はどちらになりますか」と聞くと、「えっとですね、スキポール空港で合流して、その後フィンランドに行ってもらうことになります」との返事。う〜ん...。去年のクリスマス前には同じパターンでラトビアに、というお話もありました。あ、3月には来週リスボンに行ける?という問い合わせも。
もちろん、声をかけていただけるのはありがたいのです。絶対に行きたくないわけでもない。でも、料金交渉して契約書を交わし、飛行機の手配その他(日本の通訳会社だとコーディネーターさんが考えてくれるところかもしれませんが)プラス会議なり商談なりの準備を1日2日で、というのは無理。そのあたり、どうしてわかってもらえないのかなぁと不思議に思いながらお断りしました。

ちょっと元気になって来週からまた始めます。


2009年4月9日木曜日

A New Green History of the World

Clive PontingのA New Green History of the World: The Environment and the Collapse of Great Civilisations (Vintage, 2007)を読みました。1991年に出たA Green History of the Worldの改訂・増補版。この最初の版は『緑の世界史』のタイトルで日本語版が出ています(翻訳:石弘之・京都大学環境史研究会、朝日新聞、1994年)。

環境との関係という視点で人類史を再構成した本。
新技術の発明は、一般に「進歩」ととらえられる。しかし、人間が環境を変える能力を「磨いて」きた歴史は、欲求を満たすために環境を破壊する方法を次から次へと生み出してきた時間でもある。人間の「足りない」>「新しいものを使う(ための技術を作る)」>「それが足りなくなる」>「また別の新しいものを使えるようにする」の循環が延々と続いてきた結果、現在(の環境問題)があることが、細かいデータを交じえて説明されています。



2009年3月31日火曜日

Libris Literatuurprijs 2009 ショートリスト

オランダ語文学賞Libris Literatuurprijs、今年は次の6作品が最終候補に選ばれました。

Anna Enquist - Contrapunt - De Arbeiderspers
Rob van Essen - Visser - Nieuw Amsterdam
Arnon Grunberg - Onze oom - Lebowski
Charlotte Mutsaers - Koetsier Herfst - De Bezige Bij
Dimitri Verhulst - Godverdomse dagen op een godverdomse bol - Contact
Robert Vuijsje - Alleen maar nette mensen - Nijgh & Van Ditmar

ベルギーの作家ではDimtri Verhulstが入りました。彼の本はMevrouw Verona daalt de heuvel afという静かな作品をはじめ、いくつか読みましたが、スタイルが毎回違う。ノミネートされた本も読みかけたものの、「正しい」オランダ語から離れた独特の言葉づかいとスピード感に立ち向かう元気がなくてそのままになっています。

受賞作発表は5月11日。


2009年3月18日水曜日

王立図書館、インキュナブラを購入

ハーグの王立図書館(Koninklijke Bibliotheek、KB)が、1491年に出版された本を入手したと発表しました。お値段10万ユーロ。"Die hystorie vanden grooten Coninck Alexander(アレクサンダー大王の物語)"と題されたこの本、オランダ語文学にとっては初めての宗教的な意味合いのない本ということになるそう。

すぐにデジタル化され、来週にもKBのウェブサイトで公開される予定。

 - Klik voor een uitvergroting
(写真:Koninklijke Bibliotheek, Den Haag)

2009年3月5日木曜日

Thoméseの小説、新聞と書籍で発表


P.F. Thomése(1958-)の新作が来週、5日間の新聞連載と書籍のかたちで発表されるそうです。

小説J. Kessels: The Novelを掲載するのはnrc.next。夕刊の経済紙NRC Handelsbladの系列で、20−40歳くらいを対象にしたタブロイド版の新聞。出版社としては、連載で(一部を)読んで、あらためて本を買ってくれることを期待しているわけで。でもこの新聞のターゲット層は、じっくり腰を落ち着けて記事を読むことはあまりしないはず。新しい読者の開拓につながるかどうか...。


2009年2月27日金曜日

2008年にいちばん売れた本

図書販売関係者の団体、CPNBが2008年のトップセラーリストを発表しました。
1位はKhaled HosseiniのDe Vliegelaar(英語の原題はThe Kite Runner)。去年1年間で273,980部が売れたそうです。彼の第2作、Duizend Schitterende ZonnenA Thousand Splendid Suns)も210,788部で3位。ちなみにDe Vligelaarは2006年から、Duizend Schitterende Zonnenの方は2007年から続けてトップ5に入っています。

2007年はハリー・ポッターが1位(591,888部)で、3位だったDe Vliegelaar(520,000部)をはじめ、上位5冊はすべて販売数が350,000部以上でした。2008年はちょっとスケールが小さめという結果に。

リストはここ。トップ10のうち、オランダ語オリジナルは4冊。

2009年2月12日木曜日

ちょっとずつ前へ

2月に入って急にいろんな話が決まり、身動きがとれなくなっています。もちろんうれしいことではあるのですが、意外な展開に気持ちがついていっていません。

いっぱいだ、と頭をいっぱいにしていても片づかない。小さく小さくしたことを順番に仕上げて、ちょっとずつ前へと進んでいる...と思いたい。

ずっと仕事ができてしまうという状態の危険も身にしみているので、そこにも注意。自分のための時間も初めから予定に入れて、それを(なるべく...)減らさずに乗り切りたいところです。

2009年2月10日火曜日

1月の高齢者死亡数、大きく増加

調べたいことがあって昨日今日と統計局(CBS)のデータベースを見ています。欲しい情報はなかなかないのですが、目にとまったニュースの見出し。
「寒さとインフルエンザで1000人以上が死亡」

記録的な寒さが続いた1月。今年に入っての4週間に、80歳以上の層では例年より1000人以上多い72,000人が亡くなったとのこと。原因はやはり寒さとインフルエンザの流行。この2つが重なったパターンは2005年2月/3月以来だそうです。

CBSウェブマガジンの記事はこちら

2009年1月30日金曜日

年齢とは生きてきた時間のこと

オランダ語で年齢はleeftijdといいます。生涯という意味もあって、英語のlifetime(life + time)と同じく、leef (< leven 生きる/生)と tijd(時間/時)がくっついた単語。

座右の銘というのか、leeftijdとlevenとtijdを混ぜた短い一文、日本語で書いてくれる? と知り合いの知り合いのそのまた先から回ってきてしまいました。冷たいと自分でも思わないではないけれど、基本的にそういう話は断ることにしていて、「ごめんね。でもしない」と返事したのですが、後からその言葉が頭の中をぐるぐる...。

で結局、日本語に置き換えられるか考えてみました。とりあえずこんなかんじ。

生まれてからの時間は
その時間を生かしてこそ
生きてきた時間になる

年齢というのは単に年数ではなくて、それだけの時間に何をしてきたかだ、というような意味に取ったのですが、伝わるでしょうか。

2009年1月21日水曜日

全国読み聞かせ週間

De Nationale Voorleesdagen、絵本の読み聞かせの啓発週間が始まりました。今年で6回目のイベントで、図書館や書店はもちろん、託児所や幼稚園でも展開されます。

2009年の読み聞かせ絵本に選ばれたのは、ドイツの絵本作家Ole Könneckeの作品Anton kan toveren(直訳すると「アントンは魔法が使える」ですが、子どもの本のタイトルとしてはどうも...)。しばらく前から子どもの本のコーナーで平積みになっていました。まったくシンプルながらあたたかみのあるイラストで、短い文でドキドキ感を高めていく楽しい本。受賞を記念してDVD付きの特別版が発売されるそうです。

あわせて発表された「読み聞かせにおすすめの10冊」にある絵本にも、見かけたことのあるものがいくつか。近く図書館で探してみようと思います。

De Nationale Voorleesdagen 2009のサイトはこちら

2009年1月16日金曜日

寒波去る、氷とける

週前半の雨で、天然スケートリンクはどこでも消えてしまいました。伝統のスケートマラソン大会Elfstedentocht(エルフステーデントホト:オランダの北、フリースラント州の11の街をめぐる200kmのマラソン)の開催もなるかと期待されていましたが、当面先送り。この催しも1997年1月を最後に途絶えていて、しかも今年は第1回大会から100年目にあたるそう。

自然の氷は10何年ぶり、子どもだと初めての経験で、けが人も多かったようです。防衛相も転んで手首を骨折、今週再開した国会のニュースで、スーツに大きな三角巾で座っている姿が映っていました。


付記:1月17日付の日刊紙De Volkskrantによると、この2週間でスケート中にけがをして各地の総合病院で手当を受けた人は全国で1万人にもなるとか。オランダの人口は1600万人ちょっと。緊急の場合を除いて、まずホームドクターに行った上で総合病院に回されることを考えると、びっくりする数字です。

2009年1月7日水曜日

厳冬とスケート

お正月前から気温が低い日が続いていたのですが、今年最初の週末からまたぐっと冷え込み、昨日は日が差したにもかかわらず、昼間の気温がマイナス7度。今日はマイナス4度くらいということながら、曇っているのでもっとずっと冷たい感じ。

運河や自然の池も何年ぶりかで凍結しているところが多くなり、スケートを楽しむ人が急増中。明日は12年ぶりに屋外でスケートマラソン国内選手権が開催される予定。距離は女子60km、男子100km。当然のようにライブ中継があります。ここしばらくの扱われ方からするとかなり大きなニュースのようですが、いそいそとスケートに出かけるような人が周りにいないためか、スケートは(オランダの中でも)北のスポーツという感覚があるのか、かなり遠くの方からこの盛り上がりを眺めています。

2009年1月5日月曜日

新年


あけましておめでとうございます。

2009年。
これまで以上におもしろいもの・わからないものに出会える1年に。
思いの芽に気づく余裕も忘れずに。