2012年4月25日水曜日

Kweenie

ある晩のこと。語り手の女の子が寝る準備をするところから物語は始まります。いつものように、お母さんが「むかしむかしあるところに...」とお話を始めますが、電話だと呼ばれて階下へ。女の子が部屋にひとりでいると、突然何かがベッドの上に落ちてきました。この生き物、口はきけるものの、自分が誰なのかわかりません。(彼?の)お話の世界からこぼれ落ちてしまったらしいのですが、それはまだ始まったばかりだったとのこと。しかも彼、何をたずねても「Kweenie:わ〜んない」といって泣き止まない。仕方がないので女の子は「わ〜んない」のお話を一緒に探すことにします。「むかしむかしあるところに...」で始まるお話。がんばって「あるところ」のことを考えると、2人はいろんなお話の中に投げ込まれるのですが、どれも探しているものではありません。あきらめ気味の女の子が「あるところに」と叫んで行き着いたのは、「わ〜んない」が知っている世界でした。そして女の子も、「ある晩のこと」で始まる自分の物語、彼女の世界に無事戻ったのでした。

入れ子の入れ子の...という構造がおもしろい。ありがちなストーリー展開とはいえ、得意の言葉遊びや文章と一体になったイラストの効果で、読む・眺める・考えるができる本。Appもあって、著者本人による朗読が聞けます。自分で読むのも選べるけれど、こちらは効果音etc.入りのいわばカラオケバージョン。なのでそれなりのスピードで読めないと、いろんな工夫がかえって邪魔になる気がします。ゆっくりじっくり読むにはやっぱり紙、ということかな。


Joke van Leeuwen, Kweenie, Querido, 2003, ISBN: 90 451 0023 1.
App KWEENIE (iTunes Preview)