2015年2月27日金曜日

目をつぶって考えた:Het verlangen van de egel


トーン・テレヘン(1941 - )の「動物の森」シリーズ6作目の主役は、はりねずみ。

秋もそろそろ終わろうとするある日、ひとりで寂しいはりねずみは、招待状を出すことを思い立つ。
どうぶつのみんなへ……どうぞ遊びにきてください。
このシリーズの動物はふつうに手紙を書いたりお茶を飲んだりしているので、別に驚かない。おや、と思うのはこの後。はりねずみがしばらく考えた末に書き足す一文。
でもだれも来なくてもかまいません。
招待状をとりあえず引き出しにしまって、はりねずみはさらに考える。しり込みするには理由があった。
もしみんな同時に来たらどうしよう?
反対に誰も来なかったら? 
ひょっとしてこのトゲが怖い?
実はみんなはお互いに行き来していて、ここには寄ってくれないのかも?

はりねずみが想像するお客さんはどの動物も一癖あって、気持ちよくお茶を飲んですごせない。そもそも、誰かが訪ねてきて本当に楽しいのか——短い話の最初から最後まで、はりねずみは迷い続ける。ほとんどずっとベッドの下で、ぎゅっと目を閉じて。

寂しいのか、それともひとりでいたいのか。自分はこのままで大丈夫なのか。タイトルにあるverlangenは「望み、ほしいもの」という意味。冬が深まる森で、あこがれが現実になったときに起こることに心がやわらかくなる。

言葉遣いはシンプルで重くないけれど、さらっとは読めない。ゆっくりじっくり、ときどき目をつぶって考えたりしながら味わった本。


Toon Tellegen, Het verlangen van de egel, ISBN 9789021456157, Querido, 2014.