2010年12月17日金曜日

戦争がのこしたもの:Allemaal willen we de hemel

第2次世界大戦末期のフランダース地方。ある村に暮らす一家の子どもたち3人とその友達の少年が、ドイツ敗戦の色が濃くなる日々をどのように受けとめ、それぞれの人生の決断を下したか。4人の視点が章ごとに切り替わり、物語はらせん状に進んでいく。戦争、友情、恋愛、家族といったテーマが絡む史実は重く、結末に向かって登場人物のさまざまな思いが重なり響き合う。

ティーンエイジャー向けの小説とされているものの、文章に大仰なところはまったくない。雪が積もって妙に静かな外の景色にぴったりくる本でした。2009年De Gouden Uil(ベルギーの文学賞)、青少年文学部門読者賞受賞作。

Els Beerten, Allemaal willen we de hemel, Querido, 2008, ISBN: 978 90 451 0619 9.

2010年12月9日木曜日

オンラインの著者サイン会

オランダでもネットショップの利用者が増えているとは聞きますが、ついにここまで、というニュース。

大手書店チェーンSelexyzが、オンラインのサイン会を開催します。特定の日時に書店のサイトから「注文」すると、サイン入りの著書が自宅に届くというしくみ。初回に参加するのはSaskia Noort、Ronald Giphart、Simone van der Vlugtのベストセラー作家3人。受け付けは来週の2時間で、サインする作品も決まっているようです。

時節柄、プレゼントとしての購入をねらっていることは明らか。熱心なファンなら、思い入れのある著書に直接サインをもらいたいでしょうし。イベントとして定着するのかどうか、興味深いです。

2010年12月3日金曜日

Libris Geschiedenis Prijs 2010

雨の多かった11月から一転、いきなりの大雪です。去年の年末から今年の初めのように厳しい寒さになるのでしょうか。

久しぶりに本屋さんに寄ると、David van ReybrouckのCongo. Een geschiedenisが大きな台に平積みになっていました。歴史ノンフィクションが対象の文学賞、Libris Geschiedenis Prijsの今年の受賞作。買ってしまいましたが本文だけで600ページ近くある大作です。

ちなみに、この文学賞のショートリストに残っていたのは次の5作でした。
  • Els Kleok, Vrouw des Huizes. Een cultuurgeschiedenis van de Hollandse huisvrouw, Balans - オランダ社会における「主婦」像
  • David van Reybrouck, Congo. Een geschiedenis, De Bezige Bij - ベルギーの植民地であったコンゴの歴史
  • Annejet van der Zijl, Bernhard. Een verborgen geschiedenis, Querido - オランダのベアトリクス現女王の父ベルナルドの生涯
  • Robis te Slaa & Edwin Klijn, De NSB. Ontstaan en opkomst van de Nationaal-Socialistische Beweging 1931- 1935, Boom - オランダのファシズム政党NSBの成立
  • Mariëtte Wolf, Het geheim van De Telegraaf, Boom - オランダの日刊紙テレグラーフの沿革
読みたさ度でもCongoがいちばんですが、いつになるか。




2010年11月23日火曜日

オランダ語・ヤングアダルト文学賞

"jongerenliteratuur"は、オランダ語として一般にはまだ新しく、多少おさまりの悪い言葉のようです。単語として聞けば児童文学と大人向けの作品の間に位置づけられる文学と想像はできますが、例えば書店で専門のコーナーがあるかというと、そこまではいっていません。

先週、このジャンルを対象とした文学賞が創設されたというニュースがありました。Grote Jongerenliteratuur Prijs(「ヤングアダルト文学大賞」)第1回の受賞作は次の2作品。
  • Peter Bekkers, Trouw is de andere wang (De Geus, 2009)
  • Erlend Loe, Muleum (翻訳:Femmigje Andersen-Sijtsma, De Geus, 2009)
2番目の方は要チェック本リスト入り。来年以降は読者の投票による賞も設けられるとのこと。

2010年11月17日水曜日

『通訳』

イタリア人作家による言語をテーマにしたミステリ。物語の語り手、ジュネーブの国際機関の職員ベラミーは、通訳サービスの責任者という新しい任務に就いた。もっとも、ポストを引き受けたのは上司の命令に従ったまでで、彼自身は通訳という職業に根本的な不安感・不信感を抱いていた。
内心わたしは、多言語話者を受け入れることがどうしてもできなかった。なんといっても、いくつものことばを知っていると自慢する連中はほら吹きのように思われた。どんな人間だろうと、たくさんの外国語をわけへだてなくしゃべる能力があるはずがない。あえてそんなことをするのは不健全な行為であり、精神が不安定になるに決まっている。(13ページ)
言語は歯ブラシと同様、各人が自分の物だけを口に入れるべきである。衛生上の、礼儀作法の問題だ。他言語が持つ細菌に感染するのは危険だ。細菌が脳の毛細血管に侵入して本来の体液と混ざり合い、神が予期しなかった混沌が生じたらいったいどうなるだろう。(14ページ)
そんなベラミーは、業務中に異常な行動をとるという通訳について報告を受ける。この通訳は「原初言語」を解明しつつあると主張したが、解雇された。16カ国語を操るこの通訳は、しばらくベラミーにつきまとった後、「形見をうけとってください」と言って失踪する。やがて、ベラミー自身にも通訳と同じ言語障害が現れた。退職を余儀なくされたベラミーは、通訳を追いかけてヨーロッパ各地を転々とすることになる。

物語はベラミーの回想で展開します。穏やかな語り口の間に、苦いというか痛いというか、他人を傷つけることをいとわない要素が混ざってくるのが怖い。意外な結末では、一気に読み進めてきた解放感とあわせて、どこにももっていけない重苦しさも感じました。著者本人がEUに勤務する通訳者で、Europantという人工言語を考案したというのも興味深い。

ディエゴ・マラーニ著、橋本勝雄 訳、『通訳(原題:L'interprete)』、東京創元社、2007年、ISBN: 978-4-488-01648-7.

2010年10月27日水曜日

最近読み終わった本メモ

感想をまとめる余裕がないので、タイトルだけ。

Laurent Graff, Je laatste foto, Nijgh & Van Ditmaar, 2010, ISBN 978 90 388 9296 2.(原題:Il ne vous reste qu'une photo à pendre., 翻訳:Han Meyer)

Hilde Keteleer, Puinvrow in Berlijn, Uitgeverij Vrijdag, 2009, ISBN 978 94 600 1040 8.

オランダ語で読む文学は、読み始めたら基本的に最後まで読むことにしています。が、途中で苦しくなったら別の本に手を出してしまうので、一気に読み終えるということがなかなかありません。この2冊もそんなこんなでページ数のわりに時間がかかりました。

2010年10月19日火曜日

小さく大きい

この1カ月、ゆっくり息をすることもできないようなスピードですぎていきました。

人をおくるのはどこにいてもたいへんで、いないことはこれからしみてくるというのも知っていて。すきまやきしみとはちょっとずつ折り合いをつけていくしかない。わかってはいても、まだまっすぐ向き合えません。

2010年10月6日水曜日

オランダ総選挙:連立交渉が合意

バルケネンデ政権の崩壊から7カ月、6月の総選挙から4カ月たって、ようやく新政権が発足する見通しとなりました。VVD+CDAが少数与党となり、これにPVVが閣外協力をするというかたち。VVDのルッテ党首を新首相に、閣僚人事の調整が本格化しています。

定数150の下院で新政権の議席数は52(VVD:31、CDA:21)、PVVは24議席を有する第3党。政権運営上どうしても必要とはいえ、イスラムの排除を堂々と主張するPVV(というかウィルダース党首)をいかに制御・牽制するかが問われます。特に、歴史に残る党大会を経て連立合意を承認したCDAは、分裂の危機に直面しながらの政権参加。「義をとるか、利をとるか」という選択を迫られて利をとったわけですが、党内の確執がおさまる気配はありません。




2010年9月15日水曜日

おしまいの


And did you get what
you wanted from this life, even so?
I did.
And what did you want?
To call myself beloved, to feel myself
beloved on the earth.

(Raymond Carver, Late Fragment)

2010年9月6日月曜日

新学期

夏休みが終わりました。
今年のお休みはいろんな人と会って話して考える「濃い」毎日で、思ったほど本も読めず。そのかわり、いろんなタネを分けてもらったような気がします。きもちのいい人たちに恵まれていることに感謝。

ちょっとずつまた再開です。

2010年8月9日月曜日

オランダ総選挙:結果 (4)

全面的に夏休みのオランダですが、VVDの重鎮Opstelten氏を選挙以来5人目のinformateurに迎えて、今日からVVD+CDA(+PVV)の連立を目指した交渉を行うそうです。(+PVV)というのは、PVVからの入閣はないものの政権を支持するという意味。3週間予定されている交渉がまとまれば、VVDとCDAの連立合意とPVVの政権支持に関する合意の2つの文書が発表されることになります。

2本立てとはいえ、政権側がPVVの主張にかなり歩み寄らざるを得ないことは確実。何かにつけて物議をかもすWilders党首をどうとりなすかが注目されます。その彼は、ニューヨーク・「グラウンド・ゼロ」付近のモスク建設計画への反対集会でスピーチをするということで、早速/またもや話題に。オランダの新政権に関与している(かもしれない)立場の人がそういった場に行くのはどうか、という意見に、「自分は行きたいところに行って言いたいことを言う。早くそういうものだと割り切ってもらいたい」と、いつもながらの挑発的な発言を返しています。

2010年7月21日水曜日

オランダ総選挙:結果 (3)

"Paars-plus"に向けた連立交渉が決裂しました。投票日からそろそろ1カ月半。選挙前、VVDの党首Rutteは7月1日に新政権を発足させると語っていたのに、その兆しさえありません。また振り出しに戻ったとはいえ、使える札はもうあまりない状態。

組閣に時間がかかるのはいつものことながら、先の見えなさからか、再度総選挙を実施する可能性について触れた報道もあります。そこまでいくとは今のところ思えませんが、9月にある来年度予算の発表は前政権の顔ぶれで行うことになりそうです。

2010年7月15日木曜日

頭の体操

ワールドカップ決勝でオランダが敗れ、凱旋パレードも終わって、すっかり夏休みモード。夜遅くなると、本当は優勝を祝うために買ったと思われる花火の音が聞こえます。

ひさしぶりにドイツ語の案件があって、しばらく法律文とにらめっこの日々。オランダ語の資料を斜め読みしながら、今まであまり使ったことのない脳の筋肉が鍛えられているような感覚がありました。このタイミングで「オランダ人が間違えやすいドイツ語」みたいな本を読めば、もうちょっと先に進めるのでしょうが、なかなか。

2010年7月8日木曜日

ワールドカップ決勝へ

ワールドカップも日本が去ってからテレビ観戦はしていませんが、ニュースやら何やらで当然入ってきます。

先週土曜日の午後はドイツにいて、買い物中試合状況のアナウンスに大喜びする店員さんたちに驚き、レストランでは「今日はアルゼンチン産ビーフ、タダだよ〜」と言うイタリア人のおじさんに笑って帰ってきました。決勝はオランダ対ドイツの戦いになるかとも期待されていましたが、昨夜ドイツが敗退。オランダとスペイン、ともにワールドカップ初優勝をかけた対戦になります。

それにしても、オランダは毎回あんなに偉そうな態度をとるくせに、過去に獲得したタイトルは1988年のヨーロッパカップだけ。決勝進出を決めた火曜日の夜は、近所でも花火にクラクションとなんとも騒々しい時間がしばらく続きました。さて、日曜日はどうなることか。

2010年7月1日木曜日

オランダ語圏のミステリ

もう終わってしまいましたが、今年も6月のミステリ小説フェア月間を控えて発売されたガイドブック、VN Detective & Thrillergidsから、5つ星の評価を得た本のメモ。
  • Aifric Campbell - De logica van het moorden (原題:The semantics of murder) - De Geus
  • Sean Doolittle - De perfecte buren (Safer) - De Boekerij
  • James Ellroy - Het bloed kruipt (Blood's a rover) - Atlas
  • Gillian Flynn - Duisternis (Dark places) - Boekerij
  • James Huston - Marine One (Marine One) - The House of Books
  • Arnaldur Indridason - Onderstroom (Myrká) - Q
  • Philip Kerr - Als de doden niet herrijzen (If the dead rise not) - De Boekerij
  • William Lashner - Erewoord (A killer's kiss) - A.W. Bruna
  • Henning Mankell - De gekwelde man (Den orolige mannen) - De Geus
オランダ語オリジナルの作品はなし。編集部のイチ押しはPhilip Kerrとのこと。Campbellは前から気になっていたので、ますます読みたくなってきました。

2010年6月29日火曜日

日本、PK戦で敗退

PKで終わってしまったのは残念...。見ている方のドキドキはすごいけれど、これはある種のくじ引き。失敗がカウントされるわけで、本来の試合の勝ち負けとはちょっと違うもの。

パラグアイとはスタイルが似ていたのかな? 日本はチャンスをつくる一方で、守備もすごくがんばってましたが、得点につながらなかったのが痛かった。延長戦は持久力の勝負というかんじでした。とにかくおつかれさま。ここから新しい道が開ける人もきっとたくさんいると思います。

2010年6月24日木曜日

決勝トーナメント進出!

ワールドカップ1次リーグE組、日本がオランダに次ぐ2位で通過。しかけていく姿勢があって、目が離せないおもしろい試合でした。デンマーク代表にはオランダで名前を知られている選手が複数いて、日本はおそらく負けるだろうという予想がありましたが、結果は3対1で勝利。それにしても、本田の株はこれでますますアップですね。ほかの代表メンバーについても、海外に行きたい人が行きやすい環境がこんなところから整うといいのにと思います。まあこれはサッカーに限ったことではないのですけれど。

スタジアムで、「ここまできたらやるしかねーだろ」と書いてある横断幕が目に入りました。それはこれからの試合のこと。現地応援組も含めて、思いっきり楽しんでもらいたいです。

2010年6月22日火曜日

オランダの小説、IMPACダブリン文学賞を受賞

Gerbrand Bakker(1962 - )のデビュー作、Boven is het stillがアイルランドの文学賞IMPAC Dublin Literary Awardを受賞しました。オランダ語作家としては初。この文学賞は英語以外の言語からの翻訳作品も審査の対象となり、その意味では翻訳に対する賞という解釈もできるかと。翻訳者のDavid Colmerはオーストラリア出身。子どもの本から小説、ノンフィクションまで、幅広いジャンルを手がけています。

Gerbrand Bakker, Boven is het stil, Uitgeverij Cossee, 2006. ISBN 978 90 5936 106 5
Gerbrand Bakker, David Colmer (translator), The Twin, Archipelago Books, 2009. ISBN 978 0980033021 (USA edition)



2010年6月19日土曜日

日本、オランダに惜敗

日本、残念。オランダは勝ちはしたものの、期待に沿う試合ではなかったようです。テレビの実況担当のコメントが、特に前半、だんだんと日本に好意的になっていくのがおもしろかった。「戦略的な部分で理解がきちんと共有できている」「守備のレベルがかなり高い」とか、ちゃんと褒めていました。一方でオランダの試合運びについては「覇気がない」「スピードに欠ける」「キレが悪い」...。試合後のインタビューでも、ゴールを決めたスナイダーに「(戦いぶりは)よくなかったね?」ともちかけていました。「よくなかった、とは思わない。でも、そんな簡単な試合じゃなかった。日本は手強かった」と返事をしていましたが。

対カメルーン戦よりは見ていて楽しい試合でした。次につながるものがきっとあると思うので、デンマーク戦もいいエネルギーを出してもらいたいところ。


2010年6月16日水曜日

オランダ総選挙:結果 (2)

組閣交渉のニュースはワールドカップの話題に押されています。
(今日お昼のトップニュースは、デンマーク戦でオレンジ色のワンピース(?)を着てスタジアム観戦した女性のグループに逮捕者が出たというもの。この応援グッズはオランダのビール会社Bavariaが配ったもので、FIFAはBavariaを提訴するとかしないとか...)

女王からinformateur(連立の可能性を調査する役)に任命されたRosenthal氏(VVD)、連日会談を続けています。まず勝利したVVDとPVVの組み合わせがどこまで現実的かを検討している模様。この2党が折り合ったとしても、過半数を超えるにはほかの党の支援が必要です。その場合のパートナーと目されているCDAは大きく議席を失ったこともあり、今のところ消極的。それ以外の党は、PVV(=ウィルダース)が連立に参加しないことが決定的になるまで様子を見守るつもりのようです。

2010年6月14日月曜日

サッカー日本代表、カメルーンに勝利

サッカーのワールドカップ、日本が初戦勝ちましたね。こちらでは夕方4時に試合開始でした。代表についてはほとんど知らないまま途中からテレビで観ましたが、守備のラインをがちがちに固めているのにまずびっくりでした。真剣さを通りこして悲壮感みたいなものも漂っているし。

本田が1点決めてからの一瞬は、選手の歩幅が大きくなったように思ったものの、それも長続きせず。カメルーンはボールが全然つながらないし、あまり見どころのない試合でした。ゴールを攻められることが続くとキーパーには不安があるかな。次はオランダ戦。厳しいけれど、もう少し楽しんでいる表情が見たいです。

2010年6月10日木曜日

オランダ総選挙:結果 (1)

昨日実施された下院選挙(定数150)の結果が出ました。投票率は74.5%で、史上2番目の低さ。ちなみに前回(2006年)は80%。

<連立与党>
  • CDA (選挙前の議席数41 → 21)
  • PvdA (33 → 30)
  • ChristenUnie (6 → 5)
<野党>
  • SP (25 → 15)
  • VVD (22 → 31)
  • PVV (9 → 24)
  • GroenLinks (7 → 10)
  • D66 (3 → 10)
  • Dieren (2 → 2)
  • SGP (2 → 2)
CDAとSP(社会党)の大敗、VVDとPVVが議席を伸ばすことは予想されていました。でも、伝統あるキリスト教民主主義政党CDAの議席数が、極右で政党組織としてはまだ整っていないPVVよりも少なくなるとは。バルケネンデ首相(CDA)は党首を辞任する考えを表明しましたが、新政権発足までどのくらいかかるか...。いま最も現実的といわれているのは、バルケネンデ政権の前にあったPvdA+VVD+D66(通称'paars kabinet'=紫内閣)に、GroenLinksを加えた'paars-plus'という組み合わせ。とはいえ、連立交渉が簡単にまとまるとは思えません。

2010年6月8日火曜日

模擬選挙の結果

総選挙の投票日を明日に控え、恒例のScholierenverkiezingen(中高生による模擬選挙)が実施されました。全国で386校が参加し、投票率は51%。

結果、Geert Wilders率いるPVVが20%近い支持を得て第1党となったとのこと。各党の得票率は専用のサイトにあります("Tweede Kamerverkiezingen 2010")が、以下はde Volkskrantの記事から拾った数字。
  • PVV 30
  • VVD 28
  • PvdA 25
  • D66 14
  • GroenLinks 13
  • Piratenpartij 8
  • ChristenUnie 4
  • Partij van Dieren 7
  • SGP 2
  • Trots op Nederland 1
この模擬選挙、本番の傾向がある程度読み取れると認識されているのですが、手を上げた学校だけが参加でき、しかも投票できる生徒はその学校が決める(全校/一部のクラスのみ、など)ので、12〜18歳の意思表示とはいえ多少偏りがあるように思います。それでも、将来のオランダを担う世代がこんな選択をするとはなんともショックです。

2010年5月31日月曜日

Ararat

ノンフィクション/フィクションの区別にかわり、その文章によって読み手から何か—驚き、当惑、感動、新しい視点など—が引き出されるか否かで線を引くfrictie(=英語のfriction、オランダ語でもふつうは摩擦、軋轢の意味)/non-frictieという概念を提唱しているFrank Westerman(1965 - )。例えばEl Negro en ikでは、学生の頃に偶然目にしたブッシュマンの標本を軸に、ヨーロッパが19世紀からアフリカに対して抱いてきた認識を描き出していました。

Araratとは、トルコ・アルメニア・イラン国境地帯にあるアララト山のこと。旧約聖書にあるノアの箱舟が漂着したと伝えられる火山です。著者は新聞社の旧ソ連特派員を務めていた1999年の秋に取材でアルメニアを訪れ、ミレニアム・バグの問題が世界で騒がれている時に、現地の人々がノアを実在の人物として語ること、子ども向けの聖書で親しんでいた世界が「あそこ」と指を差して説明されることに驚きます。
著者は熱心なプロテスタントの家庭で育ったものの、生物学や地質学への関心が高まるにつれて、信仰に向き合うことをしなくなっていました。かといって、無神論者だというつもりもない。少年時代に信じていた神の位置には、いま何があるのか。宗教と科学をどうとらえるか。そういった疑問を抱えてアララト山登頂を目指す時間と幼い頃の思い出が交錯する、とても個人的な旅の記録。

最終ページまでにすっきりとした答えが示せるようなテーマ設定ではないとはいえ、多少物足りなさが残りました。大人になった著者が(聖書)信仰についてどんな立場をとっているかについて、もう一歩踏み込んでほしかった。そこに触れると別の本になってしまうのかもしれませんが。

Frank Westerman, Ararat, Olympus, 2007. ISBN 978 90 467 0230 7

2010年5月25日火曜日

総選挙に向けて

2月の内閣辞職を受けた下院選挙。投票日は6月9日です。日曜の夜にはCDA、PvdA、VVD、PVVの党首を招いた生番組がありました。題してpremiersdebat、つまり首相(候補)討論。

フタを開けてみれば、相手が話し終えるのを待たずに発言したり、司会者に制止されても声高に自分の主張を繰り返したりと、議論でもなんでもありませんでした。表情や態度まで映してしまうテレビ番組として多少の演出はあるにしても、かみ合わなさを印象づけて長い2時間が終わったというのが正直な感想。選挙後には結局このうちの2党か3党(+α)が連立を組むわけで、そう考えるともっと別の姿勢もあったのではないかと。

ちなみに、予想獲得議席数は先週末の数字でVVD(36) > PvdA(33) > CDA(23) > PVV(18)となっています(Politieke Barometer, Week 20)。

2010年5月11日火曜日

Libris Literatuurprijs 2010 受賞作発表

今年のLibris LiteratuurprijsはBernald Dewulf(1960 - )が受賞しました。本命といわれていたのはTom Lanoyeでしたが、意外な結果に。

受賞作Kleine dagenは、著者の身のまわりで起こったことをテーマにした短編集。選考委員会の評には、「ひとつの家族のなかでともに生きるということが進化していく様子がひじょうに魅力的に描写されている」とあります。


2010年5月7日金曜日

日本語の本いろいろ

ゆっくり読んでいた『本は読めないものだから心配するな』(菅啓次郎、左右社、2009年)。手にとる前から予想していたとおり、派生的にいろんな本を読みたくなって『エクソフォニー』(多和田葉子、岩波書店、2003年)再読。続けて『ファザーランド』(アレッサンドロ・G・ジェレヴィーニ、青土社、2005年)。話の運びはともかく、読点の付け方が私の読みのリズムに合ってなくてぎくしゃく。勝手な解釈をすれば、著者の母国語イタリア語の要素が入っている?  

検索に引っかかってきたÜberseezungen(Yoko Tawada, Konkursbuch, 2002)も気になるけれど、ここにたどり着けるのはずっと先になりそう。

2010年5月3日月曜日

NEW COOL COLLECTIVE LIVE

New Cool Collective Big Bandのライブに行ってきました。「日本に行った影響を受けている」という最新作'Pachinko'からの作品も交えた2時間。アジアっぽいというのか、なんだかがちゃがちゃごちゃごちゃした音が入ってました。耳ざわりというのではないけれど、はっきり異質な何か。ジャズの音の流れなのに、なつかしいような、「あ、これ知ってる」というかんじは不思議でした。日本の街の中の(騒)音からすくいあげたものが染み出ていたみたいです。

New Cool Collective, Pachinko, EAN:8717206920835

2010年4月23日金曜日

飛行機が飛べない週

アイスランドの火山噴火の影響でアメリカで足止め状態だった友達が、1週間遅れで帰ってきました。有給休暇を毎年きっちり消化する人たちなので、この夏か秋の旅行は短くなりそうです。

空は連日きれいに晴れ上がっていて、火山灰が降ってくるわけでもないし、家にいる分には別に影響はないと思っていました。長引けば野菜や花が少なくなるだろうなという程度。でも、日本への郵便をポストに入れた後で、航空便もないことに気がつきました。自分が乗らなくても、飛行機が飛んでいるのがどれだけ普通のことか。

今回はのんびり構えていられましたが、通訳の仕事など入っていれば、ちょっとたいへんな話になったかもしれません。


2010年4月9日金曜日

だから本を読む

去年の手帳をめくっていたら、Martin Brilの文をメモしたページにぶつかって、手がとまりました。
Hoeveel woorden zouden er zijn die ik niet ken.
Hoeveel die ik nooit gebruik.
(知らない言葉はどれだけあるのだろう。
決して使うことのない言葉はいくつあるだろう。)

Brilとはレベルが違いますが、「言葉が足りない」という思いには、いつもとらわれています。翻訳や通訳にかかわるようになるずっと前、たぶん子どもの頃から。知らない言葉が知っている言葉になっても、使う言葉になるかというのはまた別の話。それでも、—ふだんは無意識に—たくさんの言葉の色やかたちや手ざわりを知りたくて、本を読むのです。




2010年4月1日木曜日

町の本屋さん

戦前から続いていたとなりの街の書店が倒産というニュース。いかにも昔ながらの本屋さんでしたが、インターネットやチェーンの書店と共存はできなかった、という残念な結末。ただ、本の買い方が変わったせいと考えると、多少うしろめたい気持ちもあります。

私自身、欲しい本はほとんどインターネット書店に頼っていて、特定の本を買うために書店に行くことはありません。しかも、最近購入した本で、オランダの書店で直接手にとったものは1冊もないことに気がつきました。本に呼ばれたのは、すべてベルギーとドイツ。オランダの本屋さんには、ネット書店bol.comを除いてまったく貢献していません。

本は決まった店で、必要なら取り寄せで、というお客さんが減るなかで、小さな本屋さんはこんなかたちで消えてしまうしかないのでしょうか。オランダに限らず、日本でも、どこでも起こっていることですが、仕方ないと片付けてしまうのも何かひっかかるかんじがします。

2010年3月23日火曜日

Libris Literatuurprijs 2010 ショートリスト

オランダ語の文学賞であるLibris Literatuurprijs、今年のショートリストに残ったのは次の6作品。

Walter van den Broeck - Terug naar Walden - Meulenhoff / Manteau
Bernard Dewulf - Kleine dagen - Atlas
Marie Kessels - Ruw - De Bezige Bij
Mensje van Keulen - Een goed verhaal - Atlas
Tom Lanoye - Sprakeloos - Prometheus
Peter Terrin - De bewaker - Arbeiderspers

Marie KesselsとMensje van Keulenを除く4人はベルギーの作家。去年のDimitri Verhulstに続いてベルギー人の受賞者が出るかもしれません。

受賞作の発表は5月10日。

2010年3月10日水曜日

オンラインセッション

通信大学の化学のコースのオンラインセッションがありました。自宅学習を前提にした教材ではあるのですが、ひとりではどうにも進められずにいたので、ちょっと新しい風を入れようかと。

Elluminate Live!というアプリケーションを使ったライブの講義。想像していたよりもずっと快適でした。2時間弱、見て聴いて考えたら、その日のプレゼンテーションのファイルが転送されてきて、終了。音声ファイルもあるそうです。これは便利。

オランダ語のチャットに慣れなければというオマケ的な課題も発見。準備はたいへんだけれど、なんとか楽しくわかるを増やしていけるように。


2010年3月4日木曜日

自治体議会選挙

昨日の選挙、赤鉛筆での投票に戻ったこともあり、まだ全部の結果はそろっていないようです。自治体によっては前日の夜から夜通し投票できるようにしたり、走るトラム投票所を使ったりと、おもしろい試みがありましたが、全国の投票率は54%弱。自治体選挙としては歴史上最低の数字とのこと。

6月初めに実施が決まった下院選挙の前哨戦となってしまったにもかかわらず、特に地方の小さな自治体ではローカル政党が着実に票を獲得しています。

Geert Wilders率いるPVVはアムステルダム近郊のAlmereとハーグでのみ候補を擁立。Almereでは第1党、ハーグでは第2党の立場に躍り出ました。オランダのタテマエである寛容を拒否して、無関心を刺激する声高な主張。この勢いが本当に続くのか、気になるところです。


2010年2月26日金曜日

いちばん寒い冬

今週に入って日ざしが急にやわらかくなりました。しんと冷たく曇った真冬の空とも違います。まだ油断はできないような気もしますが、ちらっと太陽が出るだけでも単純にうれしい。

今日のニュースによると、2009〜2010年の冬は1996年以来の寒さだったとのこと。平均気温は1.1度。vorstdag(霜日=冬日:最低気温が0度未満の日)は55日、ijsdag(氷日=真冬日:最高気温が0度未満の日)は20日。平年はそれぞれ38日と8日らしいので、かなり寒さが厳しかったのがわかります。雪が多かったことも特徴で、全国的に雪が降った日数は41日(平年は13日)。感覚的にはもっと雪に閉じ込められていたような気がします。私にとっては、これまででいちばん寒い冬でした。


2010年2月23日火曜日

第4次バルケネンデ内閣、崩壊

バルケネンデ首相率いるオランダ内閣の崩壊が決定的になりました。近く総辞職が表明され、5月末か6月初めあたりに総選挙と言われています。

2006年秋の総選挙を受けて発足したCDA(キリスト教民主同盟)とPvDA(労働党)、そしてChristenUnie(キリスト教連合)3党の連立内閣。今回の動きの直接のきっかけになったのはアフガニスタンでの駐留継続をめぐる騒動ですが、しっくりいっていないことは前から指摘されていて、最近も深刻な危機が報じられてはいました。

それにしても、重要法案の審議を棚上げにして年を越した今になって放り出してしまうというのは...。5月末に選挙をしても、組閣には2〜3カ月かかるわけで、新政権は早くても秋から。連立交渉が長引けば、今年いっぱい実質的な動きが何もないということにもなりかねません。

来週、3月3日には地方自治体議会選挙があります。ここにいきなり国レベルの選挙の話が入りこんでしまったために、本来の焦点がずれてしまうこともありそうです。

2010年2月16日火曜日

やりたいことをきもちよく

ちょっと煮詰まってきたのでちゃんと休む日を作りました。いいかんじだったのですが、最後の最後でおいしいコーヒーを待つ間にメールをチェックしてしまい、またぎゅうっとした気分に。

できる(ようになった)仕事について声をかけていただけるのはありがたい。おもしろい経験もたくさん。でもこれは、「やりたい」仕事とは別。これがぶつかったときにどうするか。もちろんその状況にもよるとはいえ、どうすればきもちよく回していけるのか、手探り状態は続きます。こんなことも全部、勉強。

読みたい本の山がまた高くなってきていますが、ひとやま越えるまでは視界の隅で気にしておくだけにします。

2010年2月5日金曜日

2009年のベストセラー

図書販売業者の団体CPNBによる、2009年のトップセラーリストが発表されました。

1位はStieg Larssonのミレニアムシリーズ第1作Mannen die vrouwen haten(原題:Män som hater kvinnor、日本語版:『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』—早川書房)の497,000部。Larssonの3部作は2と3も6位と7位に入っています。リストの2番目はHaar naam was Sarah(Tatiana de Rosnay、この記事で紹介)。2007年に出た本ですが、去年の秋以降書店でよく見かけるようになりました。おなじみDan Brownの最新刊Het verloren symbool(原題:The Lost Symbol、日本語版:『ロスト・シンボル』—角川書店)が3位で、4位にオランダ語オリジナルの本、Het diner(Herman Koch)が登場しています。

トップ10の中でオランダ語オリジナルの本は、これと5位のDe verbouwing(Saskia Noort)、9位のTaal is zeg maar echt mijn ding(Paulien Cornelisse、この記事で紹介)の3冊。

2010年1月29日金曜日

Validation

お正月から2週間あまり、雪に降り込められていました。先週少し寒さが緩んだのも長続きせず、冷たく曇った日が続いて昨日からまた雪。やはりたまにはちゃんとした太陽を見ないと、気分もめいりがち。週末になると天気が悪くなるのも困るところです。

そんなこんなでもやもやとしたものを抱えて観たショートフィルム、Validation。ちょっと元気をもらいました。


Validation (Kurt Kuenne, 2007)

2010年1月14日木曜日

未完成の国

ずいぶん前に録画してそのままになっていたVRTの番組、Het onvoltooide landを観ました。これがおもしろかった。第二次世界大戦の終結から2009年の初めくらいまでのベルギーの成り立ちを、政治家のインタビューと政治学者2人の解説を交えながら追っています。去年の後半からベルギーの行政や地方自治に関する翻訳しごとが続いていて、いろいろ読んだり考えたりしたこともあったので、このタイミングで観たのはかえってよかったのかも。

それにしても、1960年代にあった言語境界線(taalgrens)の確定と、その後顕在化したブリュッセル近郊の選挙区の問題が、実質的にはまったく解決されずに今日に至っていることにびっくり。何かにつけて持ち出される連邦制の将来としては3つの選択肢を挙げていました。
  1. "work in progress":現行の連邦制を手直ししつつ存続させる(番組タイトル「未完成の国」もおそらくここから)
  2. confederation(連合):フランダースとワロンの権限をいっそう強め、特定の分野でのみ「ベルギー」として協力する > ブリュッセルをどうするか?
  3. 分裂:(とりあえずフランダースの)分離独立
番組は30分 x 4回と短かったのですが、もっと深く掘り下げた本も出ているそうなので、これは読んでみたいです。

2010年1月8日金曜日

捕鯨船事故をめぐって

反捕鯨団体シーシェパードの小型船と日本の調査捕鯨船団の監視船が南極海で衝突したというニュース、日本とオランダで報道のトーンがおもしろいほど違います。

日本では(今のところ?)
シーシェパードの船「と」監視船が衝突
といった書き方ですが、オランダでの第一報は、ほとんどが
シーシェパード船「が」衝突「された」
監視船「が」シーシェパード船「に」衝突
でした。例えばde Volkskrantのウェブサイトには、Schip van milieuactivisten Sea Shepherd geramd(環境団体シーシェパードの船、衝突される)という見出しの記事がありました。

抗議船の母船スティーブ・アーウィン号はオランダ船籍。大破したアディ・ギル号(ニュージーランド船籍)にはオランダ人の活動家も1人乗船していました。シーシェパードはこの件を第2昭南丸の乗組員による「海賊行為」として、オランダの検察に告訴しています。




2010年1月7日木曜日

200X年のオランダ文学

先月のde Volkskrantは、「21世紀最初の10年:なんでもベスト5」みたいな記事を連載していました。国内外のニュース、政治的決断から、映画、音楽、TV番組まで。旅行トレンドやサッカーの得点シーンといった、わからないけどオランダだなぁというカテゴリーも。

この特集で編集部が選んだオランダ文学(オランダ「語」ではなく)のベスト5:
  1. Jan Siebelink - Knielen op een bed violen (2005)
  2. Thomas Rosenboom - Zoete mond (2009)
  3. Philip Roth - Alleman (2006)
  4. Heere Heeresma - Een jongen uit plan-Zuid '38-'46 (2006)
  5. J.J. Voskuil - De Dood van Maarten Koning (2000)
若い世代の作家が入っていませんが...。

2010年1月3日日曜日

新年


あけましておめでとうございます。

いろんな出会いを大切に。
待つことも楽しんで。