2012年7月23日月曜日

Libris Geschiedenis Prijs 2012 ロングリスト


Librisというと文学賞が話題になりますが、"Geschiedenis Prijs"という歴史ノンフィクションに対する賞もあります。当然ながら扱われるテーマもさまざま、年代も幅広いのですが、候補作のリストを眺めると、共通するところがありそうな作品が並んでいたりします。これはこれで、その時期のオランダ語圏の関心を示しているようで興味深い。


今年ロングリストに選ばれたのは以下の10点。(著者 - 作品 - 出版社名の順)

  • Peter Raedts - De ontdekking van de Middeleeuwen: Geschiedenis van een illusie - Wereldbibliotheek 中世に対する認識の変遷
  • Jan Willem Stutje - Ferdinand Domela Nieuwenhuis: Een romantische revolutionair - Houtekiet オランダの社会主義運動の第一人者といわれるDomela Nieuwenhuis(1846 - 1919)の伝記
  • Marja Vuijsje - Ons Kamp: Een min of meer Joodse geschiedenis - Atlas 収容所を生き延びたアムステルダムのユダヤ人家族の歴史
  • H.L. Wesseling - De man die nee zei: Charles de Gaulle 1890-1970 - Bert Bakker ド・ゴール仏大統領の伝記
  • Jos Palm - Moederkerk: De ondergang van Rooms Nederland - Atlas-Contact オランダのカトリック教会の地位の変遷
  • Bart van der Boom - 'We weten niets van hun lot': Gewone Nederlanders en de Holocaust - Boom 第2次世界大戦中の日記から読み解く「普通のオランダ人」にとってのホロコースト
  • Piet Emmer, Jos Gommans - Rijk aan de rand van de wereld: De geschiedenis van Nederland overzee 1600-1800 - Bert Bakker 17〜18世紀大航海時代のオランダの繁栄
  • Coos Huijsen - Nedrland en het verhaal van Oranje - Balans オランダ建国以来の国とオラニエ公家とのかかわり
  • Ileen Montijn - Hoog Geboren: 250 jaar adelijk leven in Nederland - Atlas/Contact オランダ貴族250年の歴史
  • Lodewijk Petram - De bakermat van de beurs: Hoe in zeventiende-eeus Amsterdam de moderne aandelenhandel ontstond - Atlas 東インド会社の設立から見る17世紀の証券取引市場設立の歴史

最後の本はギリシャの出版社が翻訳権を買ったというニュースを読んで以来気になっていますが、もともと博士論文だそうで、読み通せるかどうか。ちなみに受賞作の発表は10月末です。

2012年7月10日火曜日

オランダの解雇規制緩和論 [メモ]

失業保険制度改革と一緒にすすめられる解雇規制緩和についてのメモ。

オランダの解雇規制
使用者が従業員との雇用契約を解除するには、4通りの方法がある。

  • 即時解雇:不正行為があったなど極端な場合。失業保険は基本的になし。

これ以外の方法では、使用者は解雇にあたって許可・同意を得る必要がある。この際使用者は、解雇の理由をまとめた従業員個人ファイルを準備しなければならない。無期限・期限付きの雇用契約いずれの場合でも、雇用者側の理由があっての契約解消では失業保険の給付が受けられる(雇用期間についての条件あり)。
  • 簡易裁判所での手続き:比較的早い。解雇が認められるケースがほとんど。使用者は、裁判所が定める解雇補償金を支払う。
  • UWV(失業保険給付を行う行政機関)での手続き:時間がかかる。解雇補償金なし。
  • 終結合意書:使用者・従業員双方の合意による。雇用終了日などについて条件を決める。補償金あり。
問題点
解雇の方法によって補償金の有無とその額に差が生じる。


6月半ばの状況
Kamp社会・雇用相(VVD)の解雇規制緩和案が明らかになる。
4月末の5政党間合意では、解雇規制の簡素化、失業保険の財源に関する変更、解雇補償金の廃止が述べられていた。これより一歩進んで、簡易裁判所またはUWVへの解雇許可申請の手続きを廃止したい意向。

使用者が解雇を通知し、解雇の理由を現状と同じ方法でまとめる。従業員はこれに対して異議申し立てを行うことができるが、使用者がその申し立てを退ければ解雇。従業員が解雇を受け入れない場合は裁判で妥当性を判断する。
もし解雇が不当であると認められれば、復職、または解雇補償金の支払い。
ただし、補償金の額は勤務年数あたり給与半月分、総額では給与1年分が限度と、現状よりも大幅減。
解雇予告期間は一律2カ月に(現状は契約形態によって1〜4カ月)。リストラの際に年齢層や勤務年数を反映させることや、病気を理由とする解雇の禁止等は変わらず。

使用者に一方的に有利な改革か
そうともいえない。
- 従業員が理由(個人ファイル)なしに解雇された場合、裁判所は復職を決定することができる。
- 失業保険の最初の6カ月間は使用者が負担する。正規の失業保険とは異なるとの位置づけで、解雇前の月給よりは少ないが失業保険給付よりは多い額。失業保険の受給期間は、この6カ月間を含めて最長38カ月。
- さらに、使用者は解雇した従業員に対して「転職支援金」を支払う。雇用年数1年あたり月給の25%として計算、年俸半年分を限度とする。

改革が実施される見通し
厳しい。担当相は秋に法案を提出したいとしているが、まず9月に総選挙。連立協定を詰めていくなかでこの方針が弱められる可能性もある。ただし、失業保険制度改革による歳出削減(5億ユーロの)は2013年の予算にすでに織り込まれているため、新内閣としても簡単に一蹴はできない。労働組合や使用者団体との協議もあるが、どのタイミングで実施されるかは不明。