2011年12月14日水曜日

クリスマスカード

9月からほぼ毎週乗っている国境越えの電車、昨日は線路沿いの家が一気にクリスマス仕様になっていました。オランダのものと思われがちな12月5日のシンタクラース、ドイツでも地方によってはお祝いします。それが終わると慌ただしくクリスマスになるのもこの辺り(オランダの南端)と共通。

気がついてみれば12月も半ば。クリスマスカードの準備をする時期です。オランダではクリスマスカードや年賀状に使える専用切手"Decemberzegel"があって、毎年違ったデザインで売り出されます。今年のDecemberzegelは、いつも読んでいる雑誌のチームが手がけるということもあって、楽しみにしていました。去年のもノスタルジックな路線でしたが、今年の方が、やさしくあたたかい雰囲気が伝わる図案。

ちなみに、オランダ語でクリスマスカードに書く文は、
Prettige kerstdagen en een gelukkig nieuwjaar
 = Merry Christmas and a Happy New Year 
がいちばんふつうのパターン。
このkerstdagen(クリスマス)はfeestdagen(祝日)にも交換可能。なので
Prettige feestdagen en een gelukkig nieuwjaar
 = Happy holidays and a Happy New Year 
もよくあります。単語を大文字で始めて
Prettige Kerstdagen en een Gelukkig Nieuwjaar
Prettige Feestdagen en een Gelukkig Nieuwjaar
もあり。ほかには
Zalig Kerstfeest en een Gelukkig Nieuwjaar
 = Blessed Christmas...
というのもありますが、これは主にカトリックの人が使う表現で、ちょっと古いかんじがします。周囲でこの言葉を使う人の年齢が高めということもあるのでしょうが。

メールその他での挨拶も「あり」です。でも数は少ないながら、カードを選んだり文面を考えたり、そして実際に手で書いていくのはなかなか楽しい。ちょっとゆっくり誰かを思う時間です。


2011年11月1日火曜日

AKO Literatuurprijs 2011

今年のAKO Literatuurprijsが昨夜発表されました。受賞作はMarente de Moor(1972 - )のDe Nedelrandse maagd。1936年の夏を国境のすぐ向こうのドイツの村ですごすことになったオランダ人少女の体験を描いた作品。短評では"Bildungsroman"という言葉が使われています。複数の書評があまり響いてこなかったのでまだ手にしていませんが、近所が舞台ということもあるし、読む本リスト入り。

ちなみに、最終選考に残っていたのは次の6作品。

  • Jeroen Brouwers - Bittere bloemen - Atlas
  • Peter Buwalda - Bonita Avenue - De Bezige Bij
  • Arnon Grunberg - Huid en Haar - Nijgh & Van Ditmar
  • Marente de Moor - De Nederlandse maagd - Querido
  • Marja Pruis - Kus me, straf me - Nijgh & Van Ditmar
  • P.F. Thomése - De Weldoener - Contact

Peter Buwaldaはデビュー作のBonita Avenueが話題になって、いくつか賞も取って勢いがある作家。個人的にはThoméseが好みだけど、この顔ぶれではやはり大御所のBrouwersか、40歳にして20年近いキャリアのあるGrunbergかなと予想していましたが、はずれ。もっとも、一般のニュースを見ているかぎりでは意外な結果だったようで、記事の見出しにもそれが現れています。




2011年10月10日月曜日

勉強の週(その2)

しばらく遠ざかってしまいました。雨ばかりだった7、8月の埋め合わせ? というようなお天気も終わり、本格的に秋です。

この1カ月は、環境政策のグループワークが3週間。もともと2週間の予定だったのが急に変更になり、1日単位の負担が軽くなるのかと思ったのは甘かった。土日も含めてアウトプットを求められ、予想以上にたいへんな展開でした。気候変動には直接関係ないけれど、政治と科学と市民の関係について、大震災以後の日本ではいろいろ動き始めているよ、という話をしたら興味を持ってくれた人がいました。あとはレポート、これは1人の作業なので気が楽ですが、読むべきものをまだ読み切れてないところに担当の先生からメールが来たりで焦りを感じています。読みたい本の山の方はあまり見ないようにしてのりきりたいところ。

2011年9月6日火曜日

北京ブックフェア2011とオランダ

オランダのビジネス業界、インドの次は中国という流れはここ数年来のことですが、最近すごいと思うのは出版関係。たくさんの本が中国語で翻訳出版されています。オランダという国はよくも悪くも経済的なつながりを求める歴史があるし、中国の発展の勢いをみれば当然とはいえ、アジアは中国をおさえればOK、となってしまうのは残念というかちょっと複雑。

オランダは先週北京で開催されていた国際ブックフェア(BIBF 2011)のゲスト国でした。言論の自由を第一とするオランダが検閲や人権の制限を公然と行っている中国でゲスト国となることをなぜ選ぶのかという批判、また大勢の作家や文化関係者が(夏休み前に文化予算大幅カットを公言した大臣たちと一緒に)派遣され、公式行事に出席することは許しがたいといった意見が出ていたところに、ブックフェアにからんでオランダ側と連絡を取った中国人の作家が自宅軟禁されたというニュースが伝えられたり、オランダ国内での関心は高かったようです。

土曜日のde Volkskrantに、オランダ文学基金(Nederlands Letterenfonds)の代表、Henk Pröpper氏の短い文章がありました。肯定的な印象を伝えるのはまあ当然ながら、ビジネスの成果に触れているところがおもしろい。歴史・哲学書の出版社Historische Uitgeverijはなんとすべての出版物について、児童書のLeopoldも子ども向けのシリーズ複数で商談成立。ファン・ゴッホ美術館はゴッホの書簡集の権利に関して、オランダの出版社としては歴史上最高額の契約を結んだとのこと。今後の総括や実質的な評価はふつうの新聞などでは伝わらないでしょうが、翻訳出版の動向とあわせて気にしておきたいところ。

なお、オランダパビリオンのウェブサイトOpen landscape - Open bookでは関係者のブログが読めます(英語と中国語)。そのなかで、China Reading Weeklyの記者Kai Kang氏の投稿「オランダの出版社のみなさんへ:中国の出版市場進出に関する7つのルール」が秀逸。
If there’s sensitive content in your book, you’d better choose a big publisher, whose editors would more experienced and more skillful, that is: sensitive content could be retained more.
ですって。そういうことをしないことも含めて「言論の自由」を掲げているのだと思いますが...。

2011年8月18日木曜日

勉強の週

今朝は窓を開けたら空気がひやっとしてました。雨ばかりで肌寒く、夏らしく晴れ上がった日が数えるほどしかないまま、秋の気配です。

5月から参加している環境学のコース、気候変動の影響を直接的に受けている人たちの経験を政策決定にどう関与させられるか、というテーマで、読んだり書いたりしています。アプローチとしてはおもしろいけど、テキストやケースの選択にどうもひっかかるところがあって、でもそれをうまく説明できる言葉が見つからずもやもや。最初は、Globalと言うわりにはヨーロッパと開発援助の対象としてのアフリカ・アジアという型で押していくのが嫌なのかと思っていたのですが、もっと深いところでも何かあるような。落としどころというか、自分で納得できる視点を模索中。

2011年8月15日月曜日

レシピブック交換会

料理雑誌delicious. からのDMに、レシピブックの交換できます、というお知らせが。レストランや食品メーカーが参加する夏恒例のイベントでの催しとのこと。手順はシンプル。
  1. 本を包装する。
  2. ラベルに紹介文を書く(いちばんおすすめのレシピ、本を気に入っている理由...)。
  3. ラベルを本に付けて指定の棚へ。代わりに好きな本を1冊抜き出す。
ラベルはサイトのものを印刷して、項目を埋めて持ってきてね〜と、とてもお気楽な説明があるだけ。しかも開催は今週末。どんなふうになるのか見たいけど、行くのは無理。盛況なら記事になるかな。しかし、読まない本、使わない本の交換ならともかく、思い入れのあるお料理の本を知らない人に譲るというのは成立するんだろうか? 代わりの1冊を選ぶにしても、紹介文のラベルに著者名やタイトルの項目はないし、なかなかハードルが高い気がする。


2011年8月4日木曜日

ノルウェー連続テロの余波(たぶん1)

7月22日にノルウェーで起きたテロ事件。逮捕された実行犯は日本と韓国を理想として挙げていて、精神鑑定に日本人の専門家を要求していることは日本語のニュースにもなりました。こちらで分析記事が出るのはもう少し先でしょうが(なによりオランダのメディアは夏休み中)、ウィルダース・PVV党首の言動との関連付けはともかく、その批判に偏らない論説を出す時間があるかは疑問。9月に入って国会が再開すれば、議論が政治的な立場表明に引っぱられることは目に見えています。事件をどう考えるかと問われて肯定・支持するはずがないのに。

先週土曜日のde Volkskrantには、オランダでもファンが多いノルウェーのミステリ作家Jo Nesbøが書いた文章の翻訳が掲載されていました。「ノルウェーはもう無垢ではない」というタイトルで、何も変わらない・何も起こらない社会だという共通の感覚(=思い込み)は事件があった日を境に変わってしまったと述べられています。

[...いつも普通にあるものだと思っていた安心感や信頼は大きく揺らいだ。後戻りはできない。追悼集会には、冷静沈着を旨とする国民性からは意外なほど大勢の市民が参加した。これは、わたしたちが受け継いできた価値観を奪う者を許さないという意思、恐怖心には屈しないという決意の表れだ。ノルウェー人はこれから、 当たり前のものなどないということを毎年思い返すだろう。...]

Nesbøは作家として成功し、文中のエピソードによれば現首相とサイクリングに出かけるような友人関係でもあるらしく、そういう背景を考える必要はあるでしょう。それでも、お互いにルールを守っているから大丈夫、怖がる必要はないという常識が崩れたことに対する静かな憤りが伝わる文章でした。

ちなみにこの寄稿文、ニューヨーク・タイムズにも掲載されたのですが、まずタイトルが違います(The New York Times: The Past Is a Foreign Country)。またウェブ上で読む限り、ヨーロッパに関わる文脈が削られてかなり短くなっていました。結びの段落を引用。
So if there is no road back to how things used to be, to the naive fearlessness of what was untouched, there is a road forward. To be brave. To keep on as before. To turn the other cheek as we ask: "Is that all you've got?" To refuse to let fear change the way we build our society.
今後明らかになるであろう事件の詳細とは別に、その先を見据えた声も現地ではたくさんあるのだと思います。日本の地震のニュースがすっかり消えてしまったオランダの状況と重ね合わせています。


2011年7月12日火曜日

『親愛なるキティーたちへ』

オランダに来て何年かしてからのこと。ゴッホ美術館で、展示されている手紙が読めてびっくりした。19世紀の手書きの文章で判読できないところもあったけれど、ゴッホがオランダ語で語りかけていて、自分がそれに—ほんのかけらながら—直接触れているというのは不思議だった。

『親愛なるキティーたちへ』(小林エリカ著、リトルモア)を読みながらそのことを思い出した。アンネ・フランクの日記と著者の父・小林司氏の少年時代の日記とともに、アンネの足跡をたどる旅の記録。ドイツ、ポーランド、オランダ、再びドイツへ。著者の旅日記は、アンネ(1929 - 1945)の隠れ家生活と小林少年(1929 - 2010)の終戦前後の日々、史実の断片と交互に紡がれる。収容所から隠れ家、そしてアンネが生まれた家を探し当てて東京に戻るまでの17日間の記述とスケッチ。街を歩き、人と会い、言葉を交わして別れる。降りるバス停を間違え、道に迷い、無賃乗車がバレて罰金をとられてへこむ。どれも著者がいるその場所を少し離れたところから眺めている感覚。色付き・音付きだとちゃんとわかるのに、画面がミュートになっているような。

アンネと著者の父は、同じ年に生まれ、アムステルダムと金沢で同じように日記をつけていた。1945年、アンネは収容所に消えたが、父は戦争を生き延び、著者の今がある。「お姉さん」であったはずのアンネの年齢をとうに超えて、2010年のいま、自由に旅をし、絵を描き、文章を記すこと。それはアンネと少年時代の父が生きた時間と確実につながっている。そしてまた、この先にある時間とも。
一体全体、その時代に生きていた人たちは、こんなにも無惨に人が殺されてゆくのを、いったい、どうして平気で見過ごすことなんてできたのだろう。けれどどうして、そんな事態を、誰一人止めることができなかったのだろう。そこに生きていた人々は野蛮人ではない。学校へ行って、本だって読んでいた。
[...]
 しかし、今を生きる私は、それとまったく同じ問いを後に投げかけられることになるのだろうか?
 この[原文では傍点]時代に生きていた人たちは、こんなにも無惨に人が殺されてゆくのを、いったい、どうして平気で見過ごすことなんてできたのだろう。
 けれどどうして、いま私たちはたったいま起きている事態を、誰一人止めることができないのだろう。(50—51ページ)
ところで、今の私にとってオランダ語は生活する言葉だ。『アンネの日記』の原書(Het Achterhuis)も、同世代のオランダ人で自発的に全部読んだという人をあまり知らないが、何回か目を通している。 いつもなんとなくしっくりこないのには単純な理由がある。ゴッホとは違い、アンネは私の中ではあくまで日本語でキティーに手紙を書いているからだ。

子どもの頃繰り返し読んだ『アンネの日記』。たくさん持っていた関連本には写真集まであって、外国の(戦争の頃の)話であること、自分で手紙を書くときに「親愛なる...」と始めないことはわかっていた。それでも、アンネの声はどこか知らないところから当時の私が読み書きできる言葉で響き、それが私の『アンネの日記』になった。だから、『親愛なるキティーたちへ』に引用されるアンネの日記は、小林司・エリカ父娘による記述とまったく同列。距離と時間で隔てられてはいても、あるときの誰かの思いを日本語で切り取ったものだ。アンネも、小林少年も、著者自身も、それぞれに抱えた不安や希望を書き留めながら、少し先の未来へ進もうとしている。

旅の終わり、成田に到着した著者は実家に電話をかける。母と、その後かわった父の「おかえり」の声。今ここにいるからこそ、この言葉をかけてくれる人がいる。そのことに著者はその時気づいていただろうか。

小林エリカ著、『親愛なるキティーたちへ』、リトルモア、2011年、ISBN: 978-4-89815-312-3.



2011年6月22日水曜日

オランダ政府の文化予算カット(案)

10日ほど前に発表された文化・芸術関連予算の大幅削減案。その影響については、一般紙では今のところ「反対」「必要」という投書と短い論説が掲載されるにとどまっています。反対の意思表示、例えば公開質問状や署名運動などは小さな記事で扱われるのみ。今日は芸術家のグループがThe New York Timesに広告を出したというニュースがありました。"Do not enter the Netherlands - Cultural meltdown in progress"って、どうかなと思いますが。

削減案は、年間予算を2億ユーロカットし、残る7億ユーロを助成金として配分するというもの(2013年1月から)。この制度で国の助成金を受けられる団体の数は現在の半分の90前後になるそうです。パイが小さくなるのは明らかながら、国内外で知られている団体への影響は極力抑える方針が打ち出されています。つまり、有名どころ(国立博物館、NDT、ネーデルラント・オペラなど)に対しては削減幅が小さいということです。

現在国の助成金を受けている団体・組織の数がどう減るかをみると、
  • ダンスカンパニー 7 > 4
  • 演劇フェスティバル 15 > 1
  • オーケストラ 10 > 7
  • 視覚芸術ギャラリー 11 > 6
  • 教育機関の芸術研究課程 11 > 2
  • 舞台関係の若手支援機関 21 > 0
...と、新しい才能を育てる土壌がなくなることがわかります(参考:de Volkskrant、2011年6月11日)。国や基金・財団からの補助金ありきの姿勢はつねづね疑問に思っているし、Zijlstra文化担当相の「助成金に頼らなくても成立するしくみを」という主張には大いに賛成。でもそれなら新人の活動を手厚く支える制度であるべきでは。来週の国会での議論にも注目です。


2011年6月9日木曜日

銀の絵筆賞 2011年

ここのところ作品リストが続いていますが、今日も賞のメモ。

オランダ語で出版された絵本のイラストレーターを対象とする銀の絵筆賞(Zilveren Penseel)、今年はオランダ人が手がけた作品は入りませんでした。このあと9月に発表される金の絵筆賞(Gouden Penseel)は、「銀」の受賞者のうちオランダ語で作品を発表したオランダ人の作家に贈られるという規約があるのですが、今年は例外的に外国人(ベルギー1、フランス2)から選ばれることに。受賞者と作品、出版社は次の通り。
  • Vanessa Verstappen (ベルギー、文:Dimitri Leue)- Armandus de zoveelste - Lannoo
  • Joëlle Jolivet(フランス) - Kleuralles - De Harmonie
  • Blexbolex(フランス) - Seizoenen - Clavis
Armandus de zoveelsteは舞台作品が絵本になったもので、Verstappenのデビュー作。木版が新鮮です。Kleuralles(kleur alles=全部塗って)は、くっきりしたモノクロのイラストにぬり絵ができる本。そしてSeizoenenは、大人にとってはどこかなつかしいような、やわらかい絵が続く分厚い(200ページもある)本。それぞれ方向性がまったく違っていておもしろい。また、どれも一般的な「子ども向け」の本という枠からはみ出しているのも興味深いところ。


2011年6月3日金曜日

オランダ語ミステリガイド 2011年

6月はミステリ小説フェア月間。お約束のVN Detective & Thrillergids(オランダ語ミステリ作品ガイド)も発売されました。まだじっくり読んでませんが、眺めたかんじではやはり北欧度(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク...)高し。

5つ星の評価を得たのは7冊で、今年もオランダ語オリジナルの作品はなし。「大賞」はアイスランドの作家、インドリダソン。
  • Arnaldur Indri∂ason - Doodskap(原題:Svörtuloft) - Q
  • Umberto Eco - De begraafplaats van PraagIl cimitero di Praga)- Prometheus
  • S.J. Watson - Voor ik ga slapenBefore I go to sleep) - Anthos
  • Philip Kerr - Grijs verledenField grey) - De boekerij
  • Jussi Adler-Olsen - Dossier 64Journal 64) - Prometheus
  • Michael Connelly - De herzieningThe reversal) - De boekerij
  • R.J. Ellroy - Een mooie dag om te stervenThe anniversary man) - De Fontein

2011年5月9日月曜日

Libris Literatuurprijs 2011

オランダ語の文学賞Libris Literatuurprijs、Yves Petry(1967 - )のDe maagd Marinoが受賞しました。これでベルギーの作家が3年連続で選ばれたことになります。

受賞作は、インターネットで犠牲者を募集して殺人・カニバリズムに及んだというドイツであった実話(=Armin Meiwesの事件、2002年)にヒントを得た物語とのこと。このテーマはともかく、作家の知名度や刊行後の話題性からすれば、多少意外な選択ではあったようです。

今年はショートリスト発表のニュースをまとめていなかったのでここで。次の6作品でした。
  • Yves Petry - De maagd Marino - De Bezige bij
  • Ester Gerritsen - Superduif - De Geus
  • Gerbrand Bakker - De omweg - Cossee
  • Adriaan van Dis - Tikkop - Augustus
  • Peter Buwalda - Bonita Avenue - De Bezige Bij
  • Arnon Grunberg - Huid en haar - Nijgh & Van Ditmar

2011年5月5日木曜日

通訳しごと

先週あった通訳の問い合わせ。日本とビデオ会議をするので、何日かこちらの時間で朝5時半!に来てほしいという話。内容には興味があったものの、スケジュール的に無理でした。言語は英語。日本だとお昼の12時半なのに、そっちで通訳を手配するという考えは浮かばなかったらしく。

金融危機に新型インフルエンザ、去年はアイスランドの火山噴火の混乱があって、今回の地震。ここ数年、とりあえずの視察や会議出席は減っている印象でした。出張は減らす、どうしてもの場合は通訳なし(=英語)で、ということです。それで直前になるまでがんばって、やっぱり心配だから...となるのか、わりと急な問い合わせが増えています。それから、電話通訳の話がたまに回ってくるように。こちらは回線が落ちたりしたときに1人では対応できないので、自宅での案件はまだ受けたことはありませんが、現場にいない通訳、これから増えていくと思います。それがよい選択かどうかというのは別として。

今のところ、いろいろあって流れてしまう話もあり、当面は予定通りという仕事もあり、という状態で、翻訳方面を含めて地震の影響は特にありません。先が見えないのはこれまでと同じなので、心配しても仕方がない。できることを納得できるように、できるだけ楽しくやっていくだけ。


2011年4月27日水曜日

「オランダ語に翻訳されたヨーロッパ文学」賞

'Europese Literatuurprijs'なる文学賞のロングリストの発表が先日(といっても2月に)ありました。そのまま訳すと「ヨーロッパ文学賞」ながら、これとは別物。前年にオランダ語版が出版されたヨーロッパの小説が対象で、まず書店が選出したロングリスト(↓)から、選考委員会が受賞作を決めるという新しい賞です。受賞作の著者に賞金10,000ユーロ、翻訳者には2,500ユーロが贈られるとのこと。第1回の受賞発表は9月初め。買う本リストに入っていなくても見かけるたびに手にとってしまうもの、読む本の棚に入ったままのものもありで、なかなか楽しみです。

[著者、タイトル、(原書タイトル、言語)、翻訳者、出版社の順]
  1. Niccolò Ammaniti、Jij en ikIo e te、イタリア語)、Etta Maris、Lebowski
  2. Silvia Avallone、StaalAcciaio、イタリア語)、Manon Smits、 De Bezige Bij
  3. Alessandro Baricco、EmmaüsEmmaus、イタリア語)、Manon Smits、De Bezige Bij
  4. Laurent Binet、HHhHHHhH、フランス語) 、Liesbeth van Nes、Meulenhoff
  5. Julia Blackburn、Wij drieënThe Three of Us 、英語)、Paul van der Lecq、De Bezige Bij
  6. Jean-Marie Blas de Roblès、Waar de tijgers thuis zijnLà où les tigres sont chez eux、フランス語)、Karina van Santen、Martine Vosmaer、Martine Woudt、Ailantus
  7. Mircea Cartarescu、De wetendenOrbitor. Vol. 1: Aripa stînga、ルーマニア語)、Jan Willem Bos、De Bezige Bij
  8. Emma Donoghue、KamerRoom、英語)、Manon Smits、Mouria
  9. Jon Fosse、SlapeloosAndvake、ノルウェー語)、Marianne Molenaar、Wereldbibliotheek
  10. Almudena Grandes、Het ijzig hartEl corazon helado、スペイン語)、Mia Buursma、Ans van Kersbergen、Signatuur
  11. Jens Christian Grøndahl、Dat weet je nietDet gør du ikke、デンマーク語)、Annelies van Hees 、Meulenhoff
  12. Edgar Hilsenrath、Het sprookje van de laatste gedachteDas Märchen vom letzten Gedanken、 ドイツ語)、Elly Schippers、Anthos
  13. Siegfried Lenz、Een minuut stilteSchweigeminute、ドイツ語)、Gerrit Bussink、Van Gennep
  14. Charles Lewinsky、De verborgen geschiedenis van CourtillonJohannistag、ドイツ語)、Elly Schippers、Signatuur
  15. Ricardo Menéndez Salmón、De schendingLa ofensa、スペイン語)Bart Peperkamp、Wereldbibliotheek
  16. David Mitchell、De niet verhoorde gebeden van Jacob de ZoetThe Thousand Autumns of Jacob de Zoet、英語)、Harm Damsma、Niek Miedema、Ailantus
  17. Marie Ndiaye、Drie sterke vrouwenTrois femmes puissantes、フランス語)、 Jeanne Holierhoek、De Geus
  18. Bernhard Schlink、ZomerleugensSommerlügen、ドイツ語)、Nelleke van Maaren、Cossee
  19. Uwe Timm、HalfschaduwHalbschatten、ドイツ語)、 Gerrit Bussink、Podium
  20. Jáchym Topol、De werkplaats van de duivelChladnou zemí、チェコ語)、Edgar de Bruin、Anthos

2011年4月19日火曜日

官僚文書の進化?

しばらくかかっていた議会文書の翻訳。「安全」とか「確実に」という表現を書くときにかすかにひっかかるものを感じつつ、終了。同じテーマで、ある法律文とそれに関係する大臣の答弁など、ここ25年くらいの議論を順番に読んでいましたが、最近のものほどぼかした表現が多くなるのに気がつきました。「適切な」とか「前向きに」とか言うわりには、何をするのかがはっきりしない。ある意味日本語に近くなるというか。また感覚的ながら、1文が(無駄に)長くなる傾向も。難しい内容とは別におもしろい発見でした。
 

2011年4月7日木曜日

これは本、の本

行政法の試験、無事終了。今回は勉強の予定がかなりずれ込んでしまったこともあり、ほっとしました。次の日はブリュッセルでアデル(Adele)のコンサート、というわけでひさしぶりに自主的お休み。で、お約束のFnacに寄ったところ、とても楽しい絵本を見つけました。オランダ語版(Het is een boek)とフランス語版(C'est un livre)が通路をはさんで置かれてましたが、もともとは英語の本。Macmillan Children's BooksがYouTubeで紹介しています。


インターネットやその周辺にかまけて、本を読むことをしなくなった人たちをやさしくからかう内容。なので子どもの本というより中高生〜大人向けかと。そのうちプレゼントにするつもりで購入しました。

Lane Smith, It's a Book, Roaring Brook Press, 2010, ISBN 978-1-59643-606-0.
Lane Smith, Het is een boek,(翻訳:Joukje Akveld), Lemniscaat, 2010, ISBN 978-9-047770-307-5.

2011年3月28日月曜日

オランダの反応(4)

メディアの関心は先週来リビアに移りました。原子力発電所のニュースは(「ニュース」なので...といえばそれまでですが)誰が会見した、というかたちで厳しい状況が伝えられるのみ。

政治の世界では、GroenLinks(緑の党左派)が新規原子力発電所の建設許可要件に国民投票での支持を盛り込むべきだとして法案提出の準備を進めているという記事が今日のde Volkskrantにありました。国民投票については欧州憲法条約の批准拒否(2005年)という過去があり、政府としては避けたい方向なはず。GroenLinksとしては、現政権に閣外協力をしているPVVの支援を要請するつもりとのこと。原子力をめぐる立場は別として、2005年のように国民投票を実施することについての協調ですが、どう進むか。

2011年3月16日水曜日

オランダの反応(3)

15年以上も日本に住んでいた友達から、いちどアメリカに帰ることにしたと連絡が。ほかの外国人の知り合いも東京を離れました。知っている東京がなくなってしまうようで、とてもかなしい。その一方で仕事関係の連絡はちゃんとあって、どう受けとめていいかわからず混乱しています。

オランダでは地震というより原子力発電所のニュースばかり。情報が少ないとはいえ事実関係を説明せず不安をあおっている。そこそこきちんと理解したうえで意見を述べようとする人も少ないのか、PvdAのDiederik Samsonという下院議員さんが夜の時事番組(複数)に連日ゲストとして出ている。この人は国会では少ない理系出身(原子物理学専攻)で、グリーンピースの活動家でもあったそう。理路整然と話を展開するのでテレビ屋さんとしてはものたりないかもしれないけど、原子力不要を感情論に走らず訴えられる人はいま貴重な存在。

2011年3月15日火曜日

オランダの反応(2):原子力発電

スイス、ドイツが原子力政策の見直しを表明しましたが、オランダではいまのところ既定路線に変更はないようです。Verhagen経済相は昨日、日本の事態は新規建設許可の要件に反映される、と発言。近い将来、国内に原子力発電所を新設する考えをあらためて示しました。

オランダでは、地球温暖化防止の枠組みで原子力発電所新設の議論が再燃していました(以前のブログ)。去年成立した政権は2015年の建設着手を目指して今期中に許可を発給すると公表。3月初めに行われた州議会選挙でも、すでに原子力発電所があるゼーランド州では2基目の建設誘致が争点のひとつとなっていました。

許可要件については、今月末の国会での審議を経て最終調整の予定でしたが、そこに今回の地震。現在運転中のボルセラ(Borssele)発電所はM5.2の地震と7.3mの津波に耐えられる構造だ(から安全)と発表されたものの、この状況ではたして意味があるのか...。


2011年3月14日月曜日

オランダの反応

東日本大震災、ニュースをみてメールや電話をくれたこちらの友人・知人に感謝。休暇先からわざわざ連絡してくれた人も。それにしても、記者会見では手話通訳がつくのが遅かった。外国語での公式の情報提供はどうなっているのか...

オランダでの報道は、金曜日(11日)は夜までテレビも特別体制でしたが、週末はふつうに戻りました。原子力発電所の状況も大きなトピックとして扱われてはいるものの、関心は薄まっています。もちろん、ニュースを追いかけている私の態度も違いますし、オランダ語になるのを待つことなく情報を収集することもできるわけで。ただ、外国で起こった大きな自然災害のことが伝わればすぐに支援活動の呼びかけがある国だと思っていましたが、そのような動きもいまのところなく、こんな温度差もかすかに気になっています。

2011年3月12日土曜日

とにかく無事で

11日金曜日の朝、いつもの流れでメールをチェックし、そのあと日本のニュースサイトに行って地震のことを知りました。日本時間で夕方5時。すでに電話はつながらず、メールで反応を待つしかありませんでした。停電や断水といった状態になっても、ネットが生きている不思議。

仕事をしつつも、これよりもっとだいじなことがあるよ、と思って集中できず。幸い家族や友人・知人はほぼ大丈夫との知らせ。テレビでヨーロッパの報道、ストリーミングで日本のニュースを追いかけていますが、リアルタイムで情報が入ってくることがいいのか悪いのか。次々と流れる映像にしびれたようになっています。

とにかく、いま無事でいる方々が、これからけがなどなくすごせるよう祈るばかりです。

2011年2月28日月曜日

Fiet wil rennen

1月の読み聞かせ週間で「今年の絵本」に選ばれたFiet wil rennen。ダチョウ(たぶん)のFietは走るのが大好き。いつも走っているけれど、その日は思うように走れない。それでもFietは...という話。意外なオチがある展開と、表情豊かなイラスト。1対1より、例えば教室で、いろんなやりとりをしながら読んでもらうともっと楽しい本。

レイアウトにも工夫があります。ふつうの段落の終わりに動物のしっぽが横切り、その下に大きなフォント+大文字で、叫び声を見えるようにしているページが印象的でした。

Bibi Dumon Tak + Noëlle Smit, Fiet wil rennen, Querido, 2010, ISBN: 978 90 451 075 85

2011年2月10日木曜日

積み重なった思い:Boven is het stil

経歴に「作家・庭師」とあるGerbrand Bakker(1962 - )のBoven is het stilを読みました。大人向けの小説としてはデビュー作(2006年)。この英語版は昨年IMPACダブリン文学賞を受賞しています(この記事で紹介)。

主人公の男性、ヘルマーは55歳。結婚歴なし。北ホラントの農場で父親と2人暮らし。母親は10年前に亡くなり、双子の弟は19歳のときに事故で死亡。跡継ぎとして父親が目をかけていたのはこの弟ヘンクだったが、ヘルマーは大学での勉強を断念せざるを得なくなる。それから35年。朝早く起きて、動物(乳牛、羊、鶏、そしてロバ)の世話をし、農場まわりの仕事を片付けるだけの毎日。そこに突然、弟の元婚約者から手紙が届く。その後、彼女の19歳の息子ヘンクが住み込みの手伝いとしてやってきて、ヘルマーの単調な生活が少し変化する。

とても静かな、距離を置きながらも対象をていねいに見つめた描写。スピード感とか、ぐいぐい引っ張られるような力強さはないけれど、物語は主人公の生活のテンポですすんでいく。表立っては何も変化がないようでも、確実に起こってしまったこと。それが層になったところに現在の日々があることが、じわじわと伝わってくる。また話の運びとは別に、自然を描く言葉づかいになじみがなく、新鮮でした。

オランダでもベルギーでも、書店の棚は翻訳作品が優勢です。よその国で話題になった作品はわりとすぐ翻訳が出ますし、村上春樹の『1q84』も原書の刊行から約1年で、他言語に先がけて出版されていたりします。読者にとっては選択の幅が増えて楽しいし、オランダ語への翻訳者にとっても悪くないことでしょうが、オランダ語で書く新しい作家にとっては厳しい状況ではないかと。もともと市場として大きくない(オランダ・ベルギー・スリナム+α)ところに、外国の話題作とも競争して本になるところまでたどり着かないといけないわけで。そこからさらに別の言語に翻訳され、それが評価されるというのは、いろんな力がうまく働いたからにちがいありません。


Gerbrand Bakker, Boven is het stil, Cosee, 2006, ISBN:978 90 5936 228 4

2011年1月31日月曜日

週間トップセラーリスト

ふだん読んでいる新聞、Volkskrantの土曜日版には10ページ前後の読書セクション(別刷り)が入っています。ここに出ている図書販売業者の団体CPNBによるベストセラートップ5というコーナー、いつもはさらっと見るだけですが、1月29日の掲載分には?がともりました。
  1. Bibi Dumon Tak & Noëlle Smit, Fiet wil rennen, Stichting CPNB (1)
  2. Annejet van der Zijl, Sonny Boy, Querido (92)
  3. Suzanne Vermeer, Zwarte piste, A.W. Bruna (2)
  4. Han van Bree, Het aanzien van 2010, Het Spectrum (3)
  5. Tatiana de Rosnay, Haar naam was Sarah, Artemis & co (102)
(カッコ内の数字はCPNBトップセラー60冊ランキング入りした週の数)

ジャンルで分けると、
  1. 絵本:今年の読み聞かせ週間(1月19〜29日)の推薦図書10冊のなかで特に評価が高い作品
  2. =歴史ノンフィクション:映画が公開されたばかり
  3. =人気の女性ミステリ作家の最新作
  4. =ニュース年鑑
  5. =翻訳文学、こちらも2010年秋に映画が公開(Elle s'appelait Sarah
となります。販売数の単純な集計とはいえ、なんというか、無節操ぶりに苦笑。


2011年1月25日火曜日

オランダの切手コレクション

ハーグにある博物館、Museum voor Communicatieが新しいウェブサイトを公開しました。オランダで初めて切手が発行された1852年から現在までを網羅したもの。切手によっては試し刷りなども見られ、デザイナー、テーマ、材質などで検索も可能。年表に切手が配置されていて、同じデザイナーのものが線でつながっているのもおもしろい工夫。例えばディック・ブルーナで検索してみると、彼が手がけた最初の切手は1969年、最後は1995年の発行でした。

オランダでは去年から切手の額面表示がなくなって、「1」や「2」と印刷されるようになっています。郵便料金が値上がりしても切手を足さずに使えるので便利でお得な対策ではあるのでしょうが、これだと旧料金の切手を混ぜて貼りたいときに面倒だというだけでなく、時間の経過がわからなくなりますね。たくさんの切手をいちどに見て感じました。

オランダ切手コレクションのウェブサイト:Museum voor Communicatie - Postzegel ontwerpen
年表はここから。

2011年1月19日水曜日

Sonny Boy、映画化

Annejet van der Zijl(1962 - )のベストセラー、Sonny Boyの映画版が今月末に公開されるそうです。数年前に縁あって正面から向き合った本で、映画化は2005年に決まっていたことを知っているので、やっと、というところ。もっともオランダでは、プロダクションが自社で資金を都合できないと国の補助金に頼ることになり、映画が完成するまで5、6年かかるのは珍しくないようですが。

1930年頃から第2次世界大戦の終わりまでを軸に、結婚生活に破れたオランダ人女性とスリナム出身の黒人の学生との恋愛を描いたノンフィクション。植民地、宗教、戦争、差別と、オランダ社会のいろいろな重い要素が絡んだ物語です。脚本と監督を手がけたMaria Petersは、児童文学を原作にした映画でオランダ語圏ではそれなりに知られた人。好みの問題とはいえ、ストーリーが妙にわかりやすくなっていると残念だなと余計な心配をしています。

2011年1月7日金曜日

今年の初BOL

年が明けてすぐにbol.comに注文していた本が届きました。今年初めて買った小説は、スウェーデンの作家Torgny LindgrenのDe Bijbel van Doré。読み書きはできないながらも、ギュスターヴ・ドレの聖書画集を通して世界を知った少年の物語。じっくりゆっくり読みたいです。

Torgny Lindgren, De Bijbel van Doré, 翻訳:Lia van Strien, De Geus, 2010, ISBN:978 90 445 1313 4.

2011年1月2日日曜日

2011年

あけましておめでとうございます。

知らないを知る。
途中も楽しむ。