2011年8月4日木曜日

ノルウェー連続テロの余波(たぶん1)

7月22日にノルウェーで起きたテロ事件。逮捕された実行犯は日本と韓国を理想として挙げていて、精神鑑定に日本人の専門家を要求していることは日本語のニュースにもなりました。こちらで分析記事が出るのはもう少し先でしょうが(なによりオランダのメディアは夏休み中)、ウィルダース・PVV党首の言動との関連付けはともかく、その批判に偏らない論説を出す時間があるかは疑問。9月に入って国会が再開すれば、議論が政治的な立場表明に引っぱられることは目に見えています。事件をどう考えるかと問われて肯定・支持するはずがないのに。

先週土曜日のde Volkskrantには、オランダでもファンが多いノルウェーのミステリ作家Jo Nesbøが書いた文章の翻訳が掲載されていました。「ノルウェーはもう無垢ではない」というタイトルで、何も変わらない・何も起こらない社会だという共通の感覚(=思い込み)は事件があった日を境に変わってしまったと述べられています。

[...いつも普通にあるものだと思っていた安心感や信頼は大きく揺らいだ。後戻りはできない。追悼集会には、冷静沈着を旨とする国民性からは意外なほど大勢の市民が参加した。これは、わたしたちが受け継いできた価値観を奪う者を許さないという意思、恐怖心には屈しないという決意の表れだ。ノルウェー人はこれから、 当たり前のものなどないということを毎年思い返すだろう。...]

Nesbøは作家として成功し、文中のエピソードによれば現首相とサイクリングに出かけるような友人関係でもあるらしく、そういう背景を考える必要はあるでしょう。それでも、お互いにルールを守っているから大丈夫、怖がる必要はないという常識が崩れたことに対する静かな憤りが伝わる文章でした。

ちなみにこの寄稿文、ニューヨーク・タイムズにも掲載されたのですが、まずタイトルが違います(The New York Times: The Past Is a Foreign Country)。またウェブ上で読む限り、ヨーロッパに関わる文脈が削られてかなり短くなっていました。結びの段落を引用。
So if there is no road back to how things used to be, to the naive fearlessness of what was untouched, there is a road forward. To be brave. To keep on as before. To turn the other cheek as we ask: "Is that all you've got?" To refuse to let fear change the way we build our society.
今後明らかになるであろう事件の詳細とは別に、その先を見据えた声も現地ではたくさんあるのだと思います。日本の地震のニュースがすっかり消えてしまったオランダの状況と重ね合わせています。


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