2014年4月9日水曜日

ウィルダースPVV党首の「モロッコ人」発言をめぐって

3月19日の全国自治体選挙の投開票日の夜。ハーグ市の慰労パーティーでお祭りムードの中演壇に立ったウィルダース党首は3つの質問(「政党PVVを定義する質問」)を聴衆に投げかけました。
—この街、そしてオランダで、君たちはどちらを望む?
 その1:EUを増やすか減らすか。           聴衆:「減らす!」
 その2:PvdA(労働党:連立与党)を増やすか減らすか。聴衆:「減らす!」
 その3:モロッコ人を増やすか減らすか。        聴衆:「減らす! 減らす!」
 (「減らす!」が16回響いた後で)
—わかった、だったらそうなるようにしよう。

ウィルダースはこの前の週、応援演説の最中に「モロッコ人は少なければ少ないほどハーグの街のため」と発言し、批判されると報道陣の前でもう1回繰り返して波紋を呼んでいたのですが、このニュース(と映像)が流れると大騒ぎになりました。翌日から、前代未聞の告訴・告発が続き、警察の窓口もパンク状態。先週やっと発表された暫定集計では5000件超。これとは別に、ウェブ上でできる差別に関する届出も15000件以上あるとのこと。起訴・不起訴が決定するまではまだしばらくかかるようです。

そもそも起訴に持ち込めるのか。起訴するにしても、何についての審理になるのか。専門家の間でも意見が分かれています。2011年、ウィルダースのイスラム教批判がヘイトスピーチにあたると提起された裁判では、宗教への言及は表現の自由の範囲内であるとの判断が下ったのでした。しかし今回は、(程度の差はあれど)個人が選択できる宗教ではなく、「モロッコ出身」という自分では選びようのない事実についての発言。反響の大きさもさることながら、対応がまずければ検察の信頼性も揺るぎかねません。

[メモ]
オランダの刑法で規定されている刑罰
人種、宗教または信条、性別、性的志向、身体・精神・知的障害を理由に、
ある人に対して公共の場で憎悪や差別、暴力行為を煽る表現を行う(第137d条)
ある人々の集団に対して公共の場で故意に侮辱的な表現を行う(第137c条)
者には最長1年の懲役または罰金、
職業上または慣習的にこれを行う者、もしくは結社には最長2年の懲役または罰金。