オランダの失業保険制度改正についてのメモ。
オランダの失業保険(Werkloosheidswetuitkering、WW)
- 65歳以下の労働者が週5時間以上の労働時間を喪失する場合が対象となる。
- 自主退職や違法行為を理由とする即時解雇などは対象外。
- 失業前の36週間中26週以上にわたって賃金を得ていれば、喪失した労働時間分について、この賃金の70〜75%相当額が保障される。
- 受給期間は3カ月から最長で38カ月。
- 再就職して「喪失した時間」についても受給資格あり(例えば週36時間の契約で失業し、新しい仕事が24時間の労働の場合は12時間分の失業とみなされる)。
2012年4月半ば頃までの状況
制度の改正(=受給期間の短縮)は以前から言われており、第1次Rutte内閣が成立した2010年の選挙でも争点となっていた。連立与党VVDとCDAは短縮派だったが、閣外協力のパートナーPVVは反対で、連立協定では雇用法関係の論点(失業保険法改正と解雇規制の緩和)には触れないとされていた。
不況に加えて、ユーロ参加国として財政赤字をGDPの3%以下に抑えるという義務が2013年以降は守れないという見通しが明らかになり、与党VVD、CDAとPVVの3党が緊縮財政案について協議(3月初旬〜)するなかで、改正の可能性が検討された。
その際に出た(と報道された)案
- 受給期間を最長1年に短縮
- 給付金の最初の半年間は使用者側が負担 < 解雇規制緩和と引き換え
- 給付金の額:最後の給与の75%という水準を70%(あるいはそれ以下)に減額
< 現行制度では給付開始後最初の2カ月間は75%、その後は70%
- 年齢が高い失業者向けの補填分は廃止
- UWV(失業保険給付を行う行政機関)の予算、各自治体の就業支援の予算削減
緊縮財政案自体は年金、教育・福祉、付加価値税など、多方面での改革と抱き合わせであり、どう落ち着くかははっきりしないが、4月末には骨格が明らかになる見込み。経済政策分析局(Centraal Planbureau、CPB)が効果を計算、微調整を経て内閣の正式発表となるが、法律改正が必要なものについてはその後議会で審議という手順を踏むので、実際に改正がなされるのは早くても来年の後半。9月半ばの来年度予算案の発表がひとつの目安になる。
4月23日、Rutte内閣総辞職 総選挙が9月12日に実施されることに
VVD、CDAとPVVの交渉は決裂したが、2013年度の予算成立に向けて5党(VVD、CDA、GroenLinks、D66、ChristenUnie)の合意が直後に成立。失業保険関連では以下が決まったが、具体的にどう実施するかについては不透明。
- 失業保険の給付額・期間は変更なし
- 失業保険の最初の6カ月間については使用者側が負担(2014年より)
- 解雇/退職手当の制限
> 一定額を超える部分は"work-to-work(転職支援)"の講習等に充当
- 失業保険の保険料・雇用者負担分は(来年一時的に)引き上げ
今後の方向性を明らかにするはずの来年度予算案発表(女王演説)が、今年は9月18日と総選挙の翌週というタイミングで行われる。選挙の結果によっては、新制度の計画が消えてしまうことも考えられる。