2008年12月17日水曜日

エコフォント

インクの使用量を20%減らすことができるというフォント、"ecofont"。

見本はこちら。


白い部分は細かい穴。これでインクを節約するわけです。新聞記事では「建設用資材の中を空洞にして軽量化するのと同じ」と説明されていました。
上のサンプルを小さくしてみると、

多少薄めながら穴はわかりませんね。フォントなので好みの問題はあると思いますが、「紙で読みたいけど読めればいい」ものの印刷には十分ではないかと。

開発したのはユトレヒトのデザイン系会社Spranq
フォントは専用サイト(オランダ語・英語)からダウンロードできます。

2008年12月11日木曜日

欧州委員会、ヨーロッパ文学賞を創設

先週のニュースですが、欧州委員会が文学賞を創設する計画を発表しました。来年秋から3年間の期限つきで、ヨーロッパ各国の若手作家が対象。目的は「ヨーロッパにおける現代文学の豊かさ」を内外に示すこと。賞の授与のほか、毎年文学界から「ヨーロッパ文学大使」を任命することも決まったようです。

しかし、誰がどうやって選考するのか...。選考委員の人選からして大変な作業です。もちろん、候補作選びも。そもそもヨーロッパの文学とは、という話になってしまうと終始がつかなくなるのでは。それに、言語の枠を超えて若手作家を評価するというのも簡単ではありません。当然出版社の力関係がからむ話になるのでしょうが、新人の翻訳作品は多くないはず。仮に翻訳があっても、ヨーロッパの文学メジャー言語 —ドイツ語、フランス語、英語、イタリア語あたり?— のすべてに訳されていることはまずないだろうし。

ベルギーの新聞De Standaardのオンライン版では、フランダース文学基金の代表が「それよりも各国の代表的な文学作品を集めた全集を編纂・翻訳出版する方が有意義ではないか」と語っています。

2008年12月5日金曜日

生き苦しさの先にあるもの:Stand-in

今年のVN Detective&Thrillergids(推理小説&スリラーガイド)で、オランダ語オリジナルとしては唯一5つ星を獲得。「独創性、斬新さ、緊張感、センスある文体:すべてをあわせ持っている。なかなか素晴らしい」とかなり褒められていた作品。手に取ってみたくて探したのですが、大きな書店でもいつも空振り。先日図書館で見つけたので借りてみました。

<あらすじ>
舞台は1930年代のハリウッド。ハンガリー出身のJarek Simitzは、かつてJack Stormの名でサイレント映画に出演、親友のBurt Falconにスタンドイン兼スタントマンを務めさせていた。しかしトーキーの時代に入ると、なまりのある英語しか話せないJackは干され、反対に生粋のアメリカ人Burtがスターとなった。将来への希望もなくし、関節炎の痛みばかりを抱えるJackは自殺を決意。ただし、事故に見せかけた自殺。愛する妻と子どもに保険金を遺すためだ。JackはBurtに最後の応援を頼む。そして2人は計画の実行に踏み切るが...。

B級映画っぽくもありながら予想を裏切る展開に「そう来るか!」と読み進めました。これって間違い? と思う箇所もありましたが。ちょっと雑かなぁというところは、この著者の作品は初めてだったので、パターンに慣れてないこともあるかと。

表紙は昔の映画ポスターを模したもの。Roman Noir: STAND-IN  Crime Novel of the Yearと入っています。でもそんなにダークな話ではありません。クライムノベルというのも、どうなんでしょう。犯罪をめぐる小説ではあるけれど、裏社会の闘いを描いているわけではないし。

もともと沈黙を好む上に、移民で、きちんとした英語が話せないことを恥じている主人公Jarek/Jackにとって、サイレント映画の俳優は理想的な職業でした。仕事を離れたところでもなかなか口を開かないJarekに妻のAllyが言います。「ほんとの人生ではものを言わないと(In het echte leven moet je praten.)」それは、好むと好まざるにかかわらず、時代の流れにあわせることでもありました。もがいてもどうにもならない、ここまでだ、と人生最後の芝居に踏み切ったJarekですが、考えた通りにことは運びません。そんな中で身近な人の「言っていなかったこと」も明らかになったり、サスペンスというより哀しいコメディの要素も。タイトルのスタンドインとは、危険なシーンを俳優の代わりに演じるスタントマンとは違い、撮影の準備段階でセットに入る「代役」のこと。画面に映ることのない裏方の仕事です。誰が誰の代役か、という点からストーリーを眺めると、全体のスピード感とはまた違うおもしろさがあります。

著者Dhoogeは1973年、ベルギーのゲント生まれ。小説家としてのデビューは2001年ですが、すでに40冊近い著作があります。子ども向けの共著を除き、作品にはすべてSで始まるタイトルがついているそうです。

Bavo Dhooge - Stand-in, Kramat (2007), ISBN 978 90 75212 82 2

2008年12月3日水曜日

違憲審査制の導入法案、上院で可決

12月2日、違憲法律の審判提起を可能にする法案が上院で可決されました。

オランダでは、個人の権利の保護に関して違憲審査の制度がありません。というより、裁判所が違憲性の判断を行うことは憲法で禁じられています。基本権の侵害にあたって現在唯一の救済手段は欧州人権裁判所の判断を仰ぐこと。欧州人権条約が発効した1953年以来、この裁判所がオランダ政府の人権侵害を認定したケースは50件以上あるとか。審理に少なくとも5、6年かかることを考えると、年に1回は何かあるということになります。欧州条約が定める基本権はオランダ憲法が想定しているものよりも範囲が狭いといわれていますが、最近では新しい法律を制定する際に、憲法よりもまず欧州人権条約とのからみで問題がないか検討する傾向が強まっているそうです。

可決されたとはいえ、すぐに制度導入に着手とはならず、次期政権のもと再度上下両院での採決に付されます。憲法を修正する法案であるため、今度はいずれも3分の2の賛成が必要。

この法案はGroenLinks(緑の党)のHalsema党代表・下院議員代表が提出したもので、最初に下院を通過したのは前内閣時代の2004年。このときは与党CDAを除く政党はすべて賛成(1人会派の1議員は棄権)。が、今回はCDAに加えてVVD(前内閣では連立与党、現在は野党)とSGP(プロテスタント政党)も採決に先立って反対を表明、2004年には法案を支持していた内閣も否定的な姿勢を見せて、連立与党のパートナー2政党(PvdA、ChristenUnie)が鍵を握る状態になっていました。結果、賛成37、反対36で可決したものの、数年後の再審議を切り抜けられるのか、予想がつきません。