2008年10月10日金曜日

秋の政労使三者会議

今週は政府・労働組合・使用者団体の代表が集まる三者協議がありました。毎年春と秋に開催され、注目度も高いのですが、今回は金融危機のニュースの陰に隠れてしまいました。主な合意事項は次の5つ。
  1. 2009年のベースアップ:2008年の水準(3.5%)を上限とする。
  2. 失業保険の保険料の被用者負担分をゼロに、使用者負担分を引き下げる。
  3. 最低賃金所得層・退職者層向けの購買力低下防止策を実施する。
  4. 再就職・転職支援策を強化する("van werk naar werk"「仕事から仕事へ」)。
  5. 解雇手当は75,000ユーロを上限とする(ただし、労働組合MHPはこの案に反対)。
オランダの労働組合はセクター別に組織されていて、その組合(例えば「教職員」組合)がさらに連合して大きな組織をつくるかたちになっています。最大の規模 を誇るのがFNV(オランダ労働運動連合)、次にCNV(キリスト教全国組合)、それに中堅管理職以上の被用者が加入するMHP(中堅・上級職労働組合連合)があり、この3つの組合が「労働者代表」としてが三者協議に参加します。

もちろん事前に打ち合わせをしたうえで三者協議に臨むのでしょうが、それぞれの目指すところがずれている場合もあるようで。例えば今回、協議項目の5番目にMHPが反対するのも当然といえば当然でしょう。オランダでは年収の最頻値は30,000ユーロ前後。管理職なら年収75,000ユーロ以上もあるし、そういう人の多くはMHPの加入者です。結局FNVが強行突破したようなかんじながら、あとで問題になるかもしれません。

この三者協議について気になるのは、新しい働き方をする人たちの声が汲み上げられていないこと。実は労働組合の全体の組織率は30%を切っています。ただ組合員でなくても、セクターごとに決める労働協約(CAO)は適用されるので、この意味で労働組合が協議に参加するのはわかります。でも、企業に属さずに仕事をしている人たちの立場は?

少し前、元教育相で現在 MKB-Nederland(中小企業の団体)の議長を務めるLoek Hermansが、個人事業者(オランダ語では「人を雇わない自営業者」zelfstandig zonder personeel=zzp'ers)の増加でオランダの社会保障制度が危機にさらされていると述べました。被用者として働く人が減ると、国の保険料収入も減るのは事実。このまま個人事業者の割合が増えていけば財源不足の心配も出てくる、という主旨。現行の制度では、個人事業者は保険料を納めず、国の失業保険や労災保険などは適用されません。一方で民間の保険は負担が重く、加入しない人が大多数。セーフティーネットがないまま仕事をしているということで、これはこれで問題になっています。

Hermansは今回の協議で、zzp'ersの増加による影響も議題にしたかったようです。実際に持ち出されたかどうかは今のところ不明。もっとも、この協議に個人事業者の代表は参加していないわけで、当事者抜きで話し合いをしたい、というのもどうかと思いますが。政労使の「労」の意味が広くなったという認識のもとに、多様な働き方を応援するような仕組みをつくる方向に進んでほしいものです。

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