2011年3月28日月曜日

オランダの反応(4)

メディアの関心は先週来リビアに移りました。原子力発電所のニュースは(「ニュース」なので...といえばそれまでですが)誰が会見した、というかたちで厳しい状況が伝えられるのみ。

政治の世界では、GroenLinks(緑の党左派)が新規原子力発電所の建設許可要件に国民投票での支持を盛り込むべきだとして法案提出の準備を進めているという記事が今日のde Volkskrantにありました。国民投票については欧州憲法条約の批准拒否(2005年)という過去があり、政府としては避けたい方向なはず。GroenLinksとしては、現政権に閣外協力をしているPVVの支援を要請するつもりとのこと。原子力をめぐる立場は別として、2005年のように国民投票を実施することについての協調ですが、どう進むか。

2011年3月16日水曜日

オランダの反応(3)

15年以上も日本に住んでいた友達から、いちどアメリカに帰ることにしたと連絡が。ほかの外国人の知り合いも東京を離れました。知っている東京がなくなってしまうようで、とてもかなしい。その一方で仕事関係の連絡はちゃんとあって、どう受けとめていいかわからず混乱しています。

オランダでは地震というより原子力発電所のニュースばかり。情報が少ないとはいえ事実関係を説明せず不安をあおっている。そこそこきちんと理解したうえで意見を述べようとする人も少ないのか、PvdAのDiederik Samsonという下院議員さんが夜の時事番組(複数)に連日ゲストとして出ている。この人は国会では少ない理系出身(原子物理学専攻)で、グリーンピースの活動家でもあったそう。理路整然と話を展開するのでテレビ屋さんとしてはものたりないかもしれないけど、原子力不要を感情論に走らず訴えられる人はいま貴重な存在。

2011年3月15日火曜日

オランダの反応(2):原子力発電

スイス、ドイツが原子力政策の見直しを表明しましたが、オランダではいまのところ既定路線に変更はないようです。Verhagen経済相は昨日、日本の事態は新規建設許可の要件に反映される、と発言。近い将来、国内に原子力発電所を新設する考えをあらためて示しました。

オランダでは、地球温暖化防止の枠組みで原子力発電所新設の議論が再燃していました(以前のブログ)。去年成立した政権は2015年の建設着手を目指して今期中に許可を発給すると公表。3月初めに行われた州議会選挙でも、すでに原子力発電所があるゼーランド州では2基目の建設誘致が争点のひとつとなっていました。

許可要件については、今月末の国会での審議を経て最終調整の予定でしたが、そこに今回の地震。現在運転中のボルセラ(Borssele)発電所はM5.2の地震と7.3mの津波に耐えられる構造だ(から安全)と発表されたものの、この状況ではたして意味があるのか...。


2011年3月14日月曜日

オランダの反応

東日本大震災、ニュースをみてメールや電話をくれたこちらの友人・知人に感謝。休暇先からわざわざ連絡してくれた人も。それにしても、記者会見では手話通訳がつくのが遅かった。外国語での公式の情報提供はどうなっているのか...

オランダでの報道は、金曜日(11日)は夜までテレビも特別体制でしたが、週末はふつうに戻りました。原子力発電所の状況も大きなトピックとして扱われてはいるものの、関心は薄まっています。もちろん、ニュースを追いかけている私の態度も違いますし、オランダ語になるのを待つことなく情報を収集することもできるわけで。ただ、外国で起こった大きな自然災害のことが伝わればすぐに支援活動の呼びかけがある国だと思っていましたが、そのような動きもいまのところなく、こんな温度差もかすかに気になっています。

2011年3月12日土曜日

とにかく無事で

11日金曜日の朝、いつもの流れでメールをチェックし、そのあと日本のニュースサイトに行って地震のことを知りました。日本時間で夕方5時。すでに電話はつながらず、メールで反応を待つしかありませんでした。停電や断水といった状態になっても、ネットが生きている不思議。

仕事をしつつも、これよりもっとだいじなことがあるよ、と思って集中できず。幸い家族や友人・知人はほぼ大丈夫との知らせ。テレビでヨーロッパの報道、ストリーミングで日本のニュースを追いかけていますが、リアルタイムで情報が入ってくることがいいのか悪いのか。次々と流れる映像にしびれたようになっています。

とにかく、いま無事でいる方々が、これからけがなどなくすごせるよう祈るばかりです。

2011年2月28日月曜日

Fiet wil rennen

1月の読み聞かせ週間で「今年の絵本」に選ばれたFiet wil rennen。ダチョウ(たぶん)のFietは走るのが大好き。いつも走っているけれど、その日は思うように走れない。それでもFietは...という話。意外なオチがある展開と、表情豊かなイラスト。1対1より、例えば教室で、いろんなやりとりをしながら読んでもらうともっと楽しい本。

レイアウトにも工夫があります。ふつうの段落の終わりに動物のしっぽが横切り、その下に大きなフォント+大文字で、叫び声を見えるようにしているページが印象的でした。

Bibi Dumon Tak + Noëlle Smit, Fiet wil rennen, Querido, 2010, ISBN: 978 90 451 075 85

2011年2月10日木曜日

積み重なった思い:Boven is het stil

経歴に「作家・庭師」とあるGerbrand Bakker(1962 - )のBoven is het stilを読みました。大人向けの小説としてはデビュー作(2006年)。この英語版は昨年IMPACダブリン文学賞を受賞しています(この記事で紹介)。

主人公の男性、ヘルマーは55歳。結婚歴なし。北ホラントの農場で父親と2人暮らし。母親は10年前に亡くなり、双子の弟は19歳のときに事故で死亡。跡継ぎとして父親が目をかけていたのはこの弟ヘンクだったが、ヘルマーは大学での勉強を断念せざるを得なくなる。それから35年。朝早く起きて、動物(乳牛、羊、鶏、そしてロバ)の世話をし、農場まわりの仕事を片付けるだけの毎日。そこに突然、弟の元婚約者から手紙が届く。その後、彼女の19歳の息子ヘンクが住み込みの手伝いとしてやってきて、ヘルマーの単調な生活が少し変化する。

とても静かな、距離を置きながらも対象をていねいに見つめた描写。スピード感とか、ぐいぐい引っ張られるような力強さはないけれど、物語は主人公の生活のテンポですすんでいく。表立っては何も変化がないようでも、確実に起こってしまったこと。それが層になったところに現在の日々があることが、じわじわと伝わってくる。また話の運びとは別に、自然を描く言葉づかいになじみがなく、新鮮でした。

オランダでもベルギーでも、書店の棚は翻訳作品が優勢です。よその国で話題になった作品はわりとすぐ翻訳が出ますし、村上春樹の『1q84』も原書の刊行から約1年で、他言語に先がけて出版されていたりします。読者にとっては選択の幅が増えて楽しいし、オランダ語への翻訳者にとっても悪くないことでしょうが、オランダ語で書く新しい作家にとっては厳しい状況ではないかと。もともと市場として大きくない(オランダ・ベルギー・スリナム+α)ところに、外国の話題作とも競争して本になるところまでたどり着かないといけないわけで。そこからさらに別の言語に翻訳され、それが評価されるというのは、いろんな力がうまく働いたからにちがいありません。


Gerbrand Bakker, Boven is het stil, Cosee, 2006, ISBN:978 90 5936 228 4