2010年12月17日金曜日

戦争がのこしたもの:Allemaal willen we de hemel

第2次世界大戦末期のフランダース地方。ある村に暮らす一家の子どもたち3人とその友達の少年が、ドイツ敗戦の色が濃くなる日々をどのように受けとめ、それぞれの人生の決断を下したか。4人の視点が章ごとに切り替わり、物語はらせん状に進んでいく。戦争、友情、恋愛、家族といったテーマが絡む史実は重く、結末に向かって登場人物のさまざまな思いが重なり響き合う。

ティーンエイジャー向けの小説とされているものの、文章に大仰なところはまったくない。雪が積もって妙に静かな外の景色にぴったりくる本でした。2009年De Gouden Uil(ベルギーの文学賞)、青少年文学部門読者賞受賞作。

Els Beerten, Allemaal willen we de hemel, Querido, 2008, ISBN: 978 90 451 0619 9.

2010年12月9日木曜日

オンラインの著者サイン会

オランダでもネットショップの利用者が増えているとは聞きますが、ついにここまで、というニュース。

大手書店チェーンSelexyzが、オンラインのサイン会を開催します。特定の日時に書店のサイトから「注文」すると、サイン入りの著書が自宅に届くというしくみ。初回に参加するのはSaskia Noort、Ronald Giphart、Simone van der Vlugtのベストセラー作家3人。受け付けは来週の2時間で、サインする作品も決まっているようです。

時節柄、プレゼントとしての購入をねらっていることは明らか。熱心なファンなら、思い入れのある著書に直接サインをもらいたいでしょうし。イベントとして定着するのかどうか、興味深いです。

2010年12月3日金曜日

Libris Geschiedenis Prijs 2010

雨の多かった11月から一転、いきなりの大雪です。去年の年末から今年の初めのように厳しい寒さになるのでしょうか。

久しぶりに本屋さんに寄ると、David van ReybrouckのCongo. Een geschiedenisが大きな台に平積みになっていました。歴史ノンフィクションが対象の文学賞、Libris Geschiedenis Prijsの今年の受賞作。買ってしまいましたが本文だけで600ページ近くある大作です。

ちなみに、この文学賞のショートリストに残っていたのは次の5作でした。
  • Els Kleok, Vrouw des Huizes. Een cultuurgeschiedenis van de Hollandse huisvrouw, Balans - オランダ社会における「主婦」像
  • David van Reybrouck, Congo. Een geschiedenis, De Bezige Bij - ベルギーの植民地であったコンゴの歴史
  • Annejet van der Zijl, Bernhard. Een verborgen geschiedenis, Querido - オランダのベアトリクス現女王の父ベルナルドの生涯
  • Robis te Slaa & Edwin Klijn, De NSB. Ontstaan en opkomst van de Nationaal-Socialistische Beweging 1931- 1935, Boom - オランダのファシズム政党NSBの成立
  • Mariëtte Wolf, Het geheim van De Telegraaf, Boom - オランダの日刊紙テレグラーフの沿革
読みたさ度でもCongoがいちばんですが、いつになるか。




2010年11月23日火曜日

オランダ語・ヤングアダルト文学賞

"jongerenliteratuur"は、オランダ語として一般にはまだ新しく、多少おさまりの悪い言葉のようです。単語として聞けば児童文学と大人向けの作品の間に位置づけられる文学と想像はできますが、例えば書店で専門のコーナーがあるかというと、そこまではいっていません。

先週、このジャンルを対象とした文学賞が創設されたというニュースがありました。Grote Jongerenliteratuur Prijs(「ヤングアダルト文学大賞」)第1回の受賞作は次の2作品。
  • Peter Bekkers, Trouw is de andere wang (De Geus, 2009)
  • Erlend Loe, Muleum (翻訳:Femmigje Andersen-Sijtsma, De Geus, 2009)
2番目の方は要チェック本リスト入り。来年以降は読者の投票による賞も設けられるとのこと。

2010年11月17日水曜日

『通訳』

イタリア人作家による言語をテーマにしたミステリ。物語の語り手、ジュネーブの国際機関の職員ベラミーは、通訳サービスの責任者という新しい任務に就いた。もっとも、ポストを引き受けたのは上司の命令に従ったまでで、彼自身は通訳という職業に根本的な不安感・不信感を抱いていた。
内心わたしは、多言語話者を受け入れることがどうしてもできなかった。なんといっても、いくつものことばを知っていると自慢する連中はほら吹きのように思われた。どんな人間だろうと、たくさんの外国語をわけへだてなくしゃべる能力があるはずがない。あえてそんなことをするのは不健全な行為であり、精神が不安定になるに決まっている。(13ページ)
言語は歯ブラシと同様、各人が自分の物だけを口に入れるべきである。衛生上の、礼儀作法の問題だ。他言語が持つ細菌に感染するのは危険だ。細菌が脳の毛細血管に侵入して本来の体液と混ざり合い、神が予期しなかった混沌が生じたらいったいどうなるだろう。(14ページ)
そんなベラミーは、業務中に異常な行動をとるという通訳について報告を受ける。この通訳は「原初言語」を解明しつつあると主張したが、解雇された。16カ国語を操るこの通訳は、しばらくベラミーにつきまとった後、「形見をうけとってください」と言って失踪する。やがて、ベラミー自身にも通訳と同じ言語障害が現れた。退職を余儀なくされたベラミーは、通訳を追いかけてヨーロッパ各地を転々とすることになる。

物語はベラミーの回想で展開します。穏やかな語り口の間に、苦いというか痛いというか、他人を傷つけることをいとわない要素が混ざってくるのが怖い。意外な結末では、一気に読み進めてきた解放感とあわせて、どこにももっていけない重苦しさも感じました。著者本人がEUに勤務する通訳者で、Europantという人工言語を考案したというのも興味深い。

ディエゴ・マラーニ著、橋本勝雄 訳、『通訳(原題:L'interprete)』、東京創元社、2007年、ISBN: 978-4-488-01648-7.

2010年10月27日水曜日

最近読み終わった本メモ

感想をまとめる余裕がないので、タイトルだけ。

Laurent Graff, Je laatste foto, Nijgh & Van Ditmaar, 2010, ISBN 978 90 388 9296 2.(原題:Il ne vous reste qu'une photo à pendre., 翻訳:Han Meyer)

Hilde Keteleer, Puinvrow in Berlijn, Uitgeverij Vrijdag, 2009, ISBN 978 94 600 1040 8.

オランダ語で読む文学は、読み始めたら基本的に最後まで読むことにしています。が、途中で苦しくなったら別の本に手を出してしまうので、一気に読み終えるということがなかなかありません。この2冊もそんなこんなでページ数のわりに時間がかかりました。

2010年10月19日火曜日

小さく大きい

この1カ月、ゆっくり息をすることもできないようなスピードですぎていきました。

人をおくるのはどこにいてもたいへんで、いないことはこれからしみてくるというのも知っていて。すきまやきしみとはちょっとずつ折り合いをつけていくしかない。わかってはいても、まだまっすぐ向き合えません。