2008年4月17日木曜日

ブロックハウス百科事典、完全オンライン化

ドイツの事典といえば...のBrockhaus Enzyklopädie(ブロックハウス百科事典)がオンラインで公開されます。しかも検索は無料。

この事典、2005年に30巻、希望小売価格2700ユーロというセットが出て以来、改訂版は出ていませんが、今後は印刷物のかたちではなく、オンラインのみでいくという決断。
た しかに、調べものはとりあえずインターネットにあたるのが普通になった今、紙の、しかも何十巻にもなる事典は売れないだろうと思います。それにしても無 料というのはすごい。ウィキペディアなどに対抗するという意味合いもあるのでしょうが、専門家のプライドもかかっているはず。

昨年末にはオンライン版のブロックハウスとドイツ語版ウィキペディアを比較して、ウィキペディアの方が優れているとする調査結果が発表されたり(ウィキペディアのプレスリリース)、老舗出版社としては歯がゆい思いをしていたに違いありません。

2008年4月9日水曜日

どこにどういるか:Meneer Toto - Tolk

今年のBoekenweekで配布された書き下ろし小冊子の著者、J. Bernlef。
これは手触りのいい青い紙の装丁にひかれて買ったのでした。ふつうの本よりふた回りほど小さく、1編1、2ページ、全体で60ページそこそこの本当に短い作品。

Meneer Toto(Toto氏)は語学の天才。122の言語を操り、通訳("tolk")として活躍しているが、その才能のゆえに、目にしたもの、耳でとらえたものを別の言語に置き換えてみることをやめられない。結果、少しずつ自身の存在を感じなくなっていく。休職、そして病院に収容されたToto氏が望むのは、ものに名前がない —言語が不在の— 世界。感覚でとらえたものを移し換える必要のない、静かな空間。数カ月後、氏は自分の名前すら分からなくなってしまう。

以前は数日間続く通訳の仕事をすると、ひとりになった時に自分の意識が遠くに行ってしまっているように感じることがありました。テレビを眺めていて、英語のニュースが日本語に聞こえたり。頭の中はまだ仕事モードのままで、外から入ってくる音のまとまりに勝手に反応している感覚。わずらわしいと思うのにストップできない状態。

通訳とは誰かのメッセージを伝えること。言葉は自分で選びますが、自分の意見はどこかにしまって、他人の「あれ」や「これ」を行き来させる仕事です。Toto氏はいくつもの「あれ」「これ」に深く分け入る力があったがために、自身の存在に対する希薄感を抱えるようになったと読みました。氏のような特別な能力はないにしても、自分のあれこれを顧みる時間と気持ちの余裕は大切にしないとという思いもあわせて。

J. Bernlef, Meneer Toto - tolk, Em. Querido's Uitgeverij, ISBN 90 214 5243 X

2008年3月31日月曜日

De Gouden Uil 2008 受賞作発表

Marc ReugebrinkがHet Grote Uitstel (Meulenhoff / Manteau)でDe Gouden Uil Literatuurprijs 2008を受賞しました。
一般読者の投票による読者賞は、本命といわれていたJeroen BrouwersのDatumloze dagen (Atlas)。

同時に発表される
Jeugdliteratuurprijs(児童文学)部門では、文学賞がSabien Clement, Pieter Gaudesaboos & Mieke VersypのLinus (Lannoo)、読者賞がSylvia Vanden Heede & Thé Tjong-Khingの Koek koek Vos en Haas (Lannoo)に決まっています。

2008年3月26日水曜日

Libris Literatuurprijs 2008 ショートリスト

オランダの書店チェーンLibrisがスポンサーのオランダ語文学賞、Libris Literatuurprijsのショートリストが発表されました。2007年中に発表された171の応募作から絞り込まれたのは以下の6作品。受賞作の発表は5月6日です。

Jeroen Brouwers - Datumloze dagen - Atlas
Marjolijn Februari - De literaire kring - Prometheus
Louise O. Fresco - De utopisten - Prometheus
D. Hooijer - Sleur is een roofdier - Van Oorschot
Marc Legendre - Verder - Atlas
Koen Peeters - Grote Europese Roman - Meulenhoff/Manteau

リストの1番目と2番目、BrouwersとFebruariは今週末に決まるDe Gouden Uil 2008の最終候補にも入っています。また5番目と6番目、LegendreとPeetersはフラマン語作家。Legendreの作品はふつうの小説ではなく劇画で、このジャンルからは初の候補作。新聞には「漫画家が文学賞にノミネート」という見出しがありました。

2008年3月19日水曜日

Boekenweek 2008

今年の図書週間—boekenweek—は、3月12日から22日まで。

主催は、オランダの図書販売業者、出版社、図書館協会が参加するCPNBという財団。図書週間以外にも、ミステリ月間や子どもの本週間、朗読の日などの催しを展開。またいろいろな作品賞を出してオランダ(語)の図書・読書の普及活動を行っています。

今年の図書週間でスポットがあたったのは、いわゆる熟年層。
VAN OUDE MENSCHEN... - De derde leeftijd en de letteren
(年を重ねた者から... — 第三の時代・第三の文学)
というスローガンのもと、書店や図書館では特集コーナーがつくられています。

ミステリ月間などでもそうですが、期間中に一定額以上本を買うと、作家がこのイベントのために書き下ろしたおまけの本がもらえます。今回は、痴呆症や記憶(の喪失)をテーマにした作品で有名なBernlefのDe pianoman。2005年の春にイギリス・ケントの海岸で保護されニュースになった身元不明の男性、「ピアノマン」を下敷きにした短編とのこと。実はこのおまけが読みたくて、気にはなるけど今買わなくてもいいか、と思っていた本を買ってしまいました。

2008年3月10日月曜日

"World Book Capital" 2008年はアムステルダム

ユネスコ、国際図書館連盟(IFLA)、国際出版社協会(IPA)、国際書店機構(IBF)の4団体が2001年から毎年選定している"World Book Capital(世界の本の首都?)"。2008年はアムステルダムが選ばれ、4月後半以降1年間にわたり、さまざまなイベントが予定されています。

5月18日には、旧市街の中心部が1000以上のスタンドが並ぶ世界最大のブックマーケットに変身するとか。著作権に関するフォーラム、作家のインタビューや講演、またこの催しに連動した展示会や雑誌の特集などもあるようです。

主催者のサイト:オランダ語、英語

2008年2月25日月曜日

ecothriller

「エコスリラー」とするとしまりがないですね。環境ミステリ、の方が見た目もいいかな。オランダ語の出版界で去年後半あたりから注目されている推理小説の新ジャンルです。

いち早くシリーズ化を決定したのが出版社A.W. Bruna。昨年秋にサイトを立ち上げました。このジャンルの本が10冊売れるごとに、オランダの自然を守る活動をしている団体を通して木を1本植える計画だそう。オランダ語オリジナル第1作Het Kyoto Complotは、どの書店でも目につくところに平積みされています。

ちなみにこの出版社は1868年創業、うさこちゃん(ミッフィー、オランダ語ではナインチェ)で有名なディック・ブルーナ氏のお父さん/お兄さんが経営していた会社。(翻訳)ミステリに限らず、さまざまなジャンルを手がけています。